約 514,072 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/843.html
春が近い事を告げる嵐が、町中を吹き荒れていた 今年は冬が短かった・・・此処の所食傷気味なチョコレートをばりばりと乱暴に齧りながら、俺、佐鳴武士は帰宅した 「よう、随分と身が入るじゃないか。華墨、エルギール」 決勝に向けてのスパーリング(?)を止めて俺を見る二体の神姫 「やぁ、おかえり武士君」 奥からエプロン姿の神浦琥珀が顔を出す・・・激しく似合わない その手にはぁゃιぃ色の煙を上げる鍋が鍋つかみ越しに握られている 彼女らが此処に来てから、既に三日目になる 「HELLO,CP ISOLATION」 「べ・・・っ!別にアンタに用があるわけじゃないんだからね!アタシは琥珀がアンタのマスターに義理チョコ渡しに来たのに、付き合いで来ただけなんだから!!」 マフラーと手袋で着膨れした琥珀嬢のポケットから顔を出すなり、エルギールは叫んだ。有様にマスターは苦笑していたが、私にはその意味する所は良く判らなかった 「そいつはわざわざ御丁寧にどーも・・・コレ、牧縞の皆に配ってんの?」 「うん、こう見えても僕はあの店の仲間内では一種のアイドルだからね。今年こそは皆にチョコを配ろうと思ってね」 自分で自分の事をアイドル呼ばわりするあたり、相変わらずどうにも正体の掴めない人物だが、気になったのは「今年こそ」の部分だ 「今年こそ・・・って?どういう事だ琥珀嬢?」 「まぁ、判り易く言えば実験台になれって事だね」 「・・・・・・」 「オーケイベイビィ、相手をしてやるぜ」 「マスター、地獄の壁は有名だがその台詞は原典が判りにく過ぎる」 とまれ、あがりこんで来た琥珀嬢のチョコレートで一服する事になったのだった 「・・・この団子みたいなやつは形はいびつだが味は普通だな・・・でも中身が入ってないと寂しいぜ。俺個人的にナッツが入ってるのが好きなんだ」 「僕はヌガーの入ってるのが好きさ」 「この亀型(?)のやつはやばいな・・・滅茶苦茶苦いぜ」 「糖分の加減を間違えたんだ・・・鰐は逆に異様に甘いから気をつけてね」 「要するに失敗作処分しにきただけじゃねーのか?」 「・・・まだ四十個くらいあるから好きなだけ食べてね」 「おい、何だよ今の沈黙は!?てか40個って何だよ?おかしいだろこら!!」 「へぇ、カメレオン飼ってるんだ・・・良いよね、爬虫類」 マスターの非難を無視してボナパルト君と見つめ合う琥珀嬢・・・あ、ボナパルト君が目を逸らした (強い・・・ッ!!) マスターに対する対応も含めて、何故か私の中にこの家での力関係の妙な図式が一瞬浮かんだが、不愉快な の連鎖だったので慌てて頭を振った 「何いきなり激しくヘッドバンキングしてんのよ?ホント相変わらず宇宙的にバカね」 エルギールは大概誰に対してもこうだが、私だけに特別厳し過ぎはしないだろうか? 「あぁ、あとついでに鍋とコンロ貸してくれないかな?うちにあるやつがもう駄目になっちゃったんだ」 「スルーかよ!何で駄目になるんだよそんなモンが」 「一々細かいな君は・・・ケツ穴小さ過ぎだよ」(注1) 「・・・・・・」 凄まじい迫力だ、表情は一切変わっていないというのに・・・やはり途轍も無い実力者の様だ、後半は何を言ったのかよく聞き取れなかったが(注2) 家のキッチンを占拠して、琥珀嬢のチョコレート造りが、何故かマスター宅で再開される その足元にはボナパルト君が控えている 不謹慎にも、その後姿を見て「魔女の薬草実験」を幻視した 「訳判らん!なんでウチでやるんだよそんなの!」 「ほら、なんか昔の18禁ゲームみたいで微妙に嬉しいシチュエーションだろ?」 「ほらじゃねえっての!しかも俺はお前さんみたいなえろくない体型の女は好みじゃねええ!!」 「仕方が無いだろう?深町君には彼女が居るし、皆川さんの所じゃ迷惑になるし、西さんの所には僕の本命が居るんだ・・・ならここでやるしか無いじゃないか」 「説明になってねぇぇぇぇ!!駄目だこの女あぁぁぁ!!」 うむ、マスターがムチムチ好みだということは知っていたが、本人を前にその発言は失礼過ぎるだろう どうやら話を手繰れば、チョコ作成の判定にファンブルしてついでに鍋とコンロ、そして恐らくはキッチン自体も深刻なダメージを負ったという事だな だがそれだけではわざわざ此処に来る理由は弱い・・・何せ彼女とマスターが顔をあわせるのは、私の知る限りこれで3度目だか4度目だ 本命は別に居ると言っていたから、それこそギャルゲーの常套パターンを踏襲した訳でも無さそうだし・・・すると他の所に理由が・・・? 「何時迄一人の思考に浸ってんのよ!何か相手しなさいよ」 エルギールの怒声で現実に引き戻される・・・入って来た時、私には用は無いとか言ってなかったか? 「・・・あぁ、済まないエルギール」 「・・・でとう」 「え?」 「決勝進出おめでとうって言ったのよ!二度も三度も言わせるんじゃないわよこのスカタン!!」 何故か顔を真っ赤にして私を激しく殴りまくるエルギール・・・さっぱり訳がわからない 「ホンっと頭来るわね!アンタそこに直りなさいな!性根を叩き直してあげるから!!」 じゃきん、と『魔女の剣』を構えるエルギール・・・冗談ではない 振り回される鞭剣を、辛うじてかわす 「部屋のモン壊すなよ」 マスター、どうして貴方はそんなにテキトーなのだいつもッ!! ばたんばたんばたん 「何だかなぁ・・・結局何しに来たんだよ一体」 「君は本当に愚鈍だね」 「何?」 「そんな調子じゃ何時迄たっても僕のチョコの実験台がせいぜいだ・・・さぁ、出来立てだ、ありがたく貪りたまえ」 言いつつ、琥珀嬢がマスターに差し出したチョコは、今までの40個がまだまだ彼女にしてはマシな方の代物であった事を痛感させるに足るものだった 持ち込んだクレイドルで寝付いたエルギールに、優しく毛布(?)をかける琥珀。結局居付くつもりなのか? 「エルギールは兎も角、お前はどうするんだよ?」 「この寒空の中外に放り出すつもりかい?」 「そんなに家非道い状態なのかよ?」 「・・・エルギールが来たがったんだ」 「・・・え?」 「・・・っと。これは言わない約束だった。記憶を失っておいて」 相変らず無表情に、しれっと非道い台詞を吐くなコイツは 「・・・まぁ良いがよ・・・で、お前はどうすんだ?」 「どっちみち今家は人間が生活出来る状態じゃないしね。他当たるのも面倒臭いから泊めさせて貰えるかな?」 「宿泊費取るぞ・・・さんざキッチン占拠してぁゃιぃモン造りやがって・・・後半ただのネタチョコばっかだったじゃねーか」(注3) 「体で払うよ」 「・・・っ!!」 「冗談だよ。僕も正直、君はあんまり好みのタイプじゃない・・・まぁ深町君みたいなのに比べれば、君みたいな馬鹿の方が大分好感が持てるけどね」 「は・・・ん!最初に俺のやり方に釘刺しに来やがった癖に!」 「あれは本当はニビルの担当なんだ・・・マスターである僕が言うよりも、神姫当人から言われた方が効くだろう?僕は『壁』役なんて本当は御免なんだ」 「『壁』・・・ね」 最初にぶつかる壁、限界を感じる瞬間、乗り越えるべき障害・・・俺と華墨にとって琥珀とエルギールはまさに最初の『壁』だった 「でもニビルには明らかに上昇志向があるし、エルギールには別にそんな気概はそれ程感じねえな?案外適任なんじゃねえのか?」 「それに、ニビルはその・・・巧く言えないんだが・・・何か『危うい』感じがする。不安定っつーかなんかな」 一瞬、「へぇ」という様な声を漏らして俺の顔を凝視する琥珀・・・瞬きをしろ、怖いから 「言う程鈍臭くも無いのかな?君は」 「どんだけ鈍臭く見られてんだよ俺は?」 「上昇志向・・・か、確かにね。あの時はああ言ったけど、僕自身がエルギールを『闘わせて』いる当人だからね・・・エルギールは僕の要求に応えてるに過ぎないから当然かも知れない」 今度はこっちが「へぇ」を漏らす番だった 「意外だな・・・お前さんはそんな好戦的なタイプじゃないと思ってたんだが」 むしろ、好戦的なエルギールを琥珀が抑えているように見えていたのだが・・・ 「僕はね・・・武装神姫用の剣を作ってるんだ。それで、最初はその実験を色々な武装神姫に手伝って貰ってたんだけど、その内自分の作品で自分の神姫を闘わせてみたくなってね・・・それでさる筋から譲ってもらったのがエルギールだったのさ」 「まぁ、その剣匠の工房の関連で、今家を改築してるんだ。チョコの件があろうとなかろうと、誰かの家に転がり込むつもりでは居たんだ」 「ちょっと待てよ!それって暫くウチに泊り込むって事かよ!?」 「だから言ったじゃないか。昔の18禁ゲームみたいなシチュエーションだって・・・僕みたいな不思議ちゃんはお約束だろ?」 「自分で不思議ちゃんとか言うな!てかそれどころじゃねえって!」 「別に性欲処理については相談次第で相手してあげなくも無いけど・・・?それとも人形相手じゃないと勃たない変態さんだっけ?」 「変態じゃねえ!ついでに別にお前とフラグを立てるつもりもねえ!!」 「じゃぁ誰が目標?やっぱり華墨?」 「だから変態じゃねえっての!泊り込むとかならもっと早く言えよ!?」 「そうだね、まぁそういう事で宜しく」 「ぐあああぁぁぁっ!!なんじゃそりゃああぁぁぁぁ!?」 結局俺がいくら吼えても、琥珀はウチに泊り込む事を決定、好みでないとは言え床上手な性技に絡み取られた事もあって、変な同居生活が始まったのだった 「あと、満足のいくチョコが出来る迄は実験台になってもらうから」 とんでもない奴じゃないのか?コイツは 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ 注1 ケツ穴の部分だけ何故か合成音声っぽいぁゃιぃ発音 注2 冷や汗びっしょり。この時華墨は、「いっそ人形であったなら」と一瞬思った 注3 しかも結局この日の内に渡せていない
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/168.html
前へ 先頭ページ 次へ 「固執」 仰向けに寝ながら、神姫スケール換算地上千メートルを、高速巡行するマイティ。 手足には軽量で対実弾防御力のあるカサハラ製鉄ヴァッフェシリーズのプロテクターを着込み、クリティカルな胸部には同梱装備のアーマー、頭にはヘッドセンサー・アネーロをかぶる。 右手はミニガンではなく、アルヴォPDW9。アーンヴァルの実弾射撃武装はどちらもケースレス方式をとっている。飛び出した薬莢が飛行機動を阻害する恐れがあるためだ。とくに高速移動時にその弊害が見られ、だからミニガンは飛行時に正面へ撃つことができない。 背中のウイングユニットには、ありとあらゆる推進装備がくっつけられている。エクステンドブースター、ランディングギア。そしてヴァッフェシリーズのスラスター。融通の利く動きはほとんどできないが、一方向に集中したノズルは莫大な推進力を生み出す。アラエル戦のバトルプルーブを経て、各パーツの配置が一新され、よりパワーロスが少なくなった。 翼の一方に、バランスの低下を承知で、LC3レーザーライフルを搭載していた。この装備方法では飛んでいる方向にしか撃てない。巡行武装だと割り切っている。 ここはホビーショップ・エルゴの対戦ブースである。このたびの大改装でセカンドリーグにも参加できるようになり、マスターは二駅をまたぐ必要がなくなったのだった。 スペースでは対戦相手がいない場合、こうして一人でテストモードが出きる。トレーニングマシンが普及してから使われなくなった機能だが、現在でも律儀に入れられている。 「どうしてトレーニングマシン、使わないんです?」 店長が訊いた時、 「実戦に使われるフィールドの方が役に立つ」 とマスターは答えた。 確かにトレーニングマシンと実際に試合に使用されるフィールドには若干の差がある。しかしそれは本当に若干なもので、だから皆将来的な経費が押さえられるトレーニングマシンを買うのである。 マスターの家にも無論、トレ-ニングマシンはある。 「マイティ、どうだ」 バーチャル空間の中を飛び回るマイティに話し掛ける。 『やっぱり空気の重さが違います。マシンでできたような無茶な機動が、たぶん出来ません』 バトルスペースのマシンパワーに、やはりトレーニングマシンはかなわない。戦闘中はだいたい高速で動く神姫には、この差は場合によっては致命的な差となる。 マスターもマイティも、今、一種のマンネリを覚えていた。 バトルの成績は悪くはない。ファーストへの昇格はいまだ高嶺の花だが、それでも順当に戦えている。 バトルのアクセス料金、マイティの武装代、メンテナンス料金、武装神姫というカテゴリにかかる料金はすべて、いわゆるファイトマネーでまなかうことが出来た。 余談ではあるが、この「勝てばそれなりに報酬がもらえる」という制度が実現したことが、武装神姫の世界的な発展につながった一翼を担っていると言っても過言ではない。実現にあたっては「ゲームがけがれる」とか「ギャンブルだ」などという辛辣な批判ももちろんあった。 しかし結果として、良い方向に実現した。 第三次世界大戦も起こらなかったし、宇宙人の侵略もなかったのだ。ゲームに報酬が設定された所で、なんのことがあろうか。と、人々が思ったかどうかは分からないが。 閑話休題。 ともかくそれでも、何か初期のキラキラした感覚が鈍くなってきていることは、お互いに分かっていた。 その対処法が分からない。 結局問題は棚上げで、今に至る。 『Here comes a new challenger』 ジャッジAIが挑戦者を告げる。 テストモード中はオンラインオフラインに関わらず、対戦受付はオープンにしてある。当たり前だがシャットアウト機能は無い。対戦スペースにいるのはすべからく対戦許可とみなされるのだ。 相手はオンラインからだった。 『よろしくお願いします』 当り障りの無い挨拶。女性らしい。 「よろしく」 マスターは適当に答える。 相手はセカンド。大体自分と同じような戦績。いや。 最近特に伸びてきている。 マイティがいったん待機スペースへとリターン。 『どうします?』 「例の機能を使ってみようと思う」 『じゃあ、初期装備はこのままですね』 「なるべく広いフィールドの方が良いが、狭くてもすぐ対応できる」 『分かりました』 マイティ、準備完了。 すぐに周囲のポリゴンがばらばらになり、フィールドが再構成される。 『バトルスタート。フィールド・地下空間01』 広大な空洞。高さもあるが、下は一面湖だった。所々に浮島があり、またいたるところに石の柱が立っている。 一方の入り口から、マイティが巡行飛行状態で入場。 もう一方から入ってきたのは、ストラーフタイプだった。 かなり軽装である。 ヴァッフェシリーズのブーツを履き、大腿と手首には同根装備のスパイクアーマーをそれぞれ取り付けている。胸部はハウリンの胸甲・心守。 頭部にフロストゥ・グフロートゥ、二の腕にフロストゥ・クレインを装備しているが、あれでは武器を使用できない。アクセサリーと割り切っているのだろうか。 主武装が新装備のサイズ・オブ・ザ・グリムリーパーと、二体のぷちマスィーン、肆号とオレにゃんしかなかった。プチマスィーンはどちらも射撃用のマシンガン。 何よりも特徴的なのは、メガネをかけていることだった。 「軽装備……?」 それに装飾が過ぎる。 マイティは疑問に思った。 『何か仕込んでいるのかもしれない。気をつけろ』 「了解」 そのまま巡航で近づく。ためしにレーザーライフルを二、三発撃ってみる。 ストラーフが消える。 「!?」 『光学迷彩だ。センサーをサーマルに切り替えろ』 「は、はい」 「はっずれ~♪」 真上から声が聞こえた。背筋が一気に凍りつき、マイティは慌てて後方にマシンガンの 銃口を向けようとする。 がごんっ 胸部をしたたかに打たれ、マイティは失速。落下した。 「な、なに?」 マイティは何が起こったのか分からず混乱した。姿勢を制御するのを忘れる。 『マイティ、機体を起こせ!』 はっ、と気づいてフラップを最大限に傾ける。 水面すれすれでマイティは水平飛行に移る。水しぶきが上がる。 胸部アーマーがべっこりとひしゃげていた。ストラーフは鎌の背でなく、刃で打った。アーマーが無ければ負けていた。 「マスター、今のは!?」 『分からん。瞬間移動に見えた。今解析している』 『調べても無駄よ』 相手のオーナーが言った。 『本当に瞬間移動ですもの』 『何?』 マスターのモニターに相手の画面が現れた。眼鏡を掛けた黒髪の女性。 『公式武装主義者(ノーマリズマー)のマイティに会えて嬉しいわ』 『もう二つ名がついているのか。光栄だな』 『セカンドながらあの鶴畑を倒した実力派ですもの。神姫に入れ込んでいる人間なら、だいたい知っているわ』 『さしずめそちらは特殊装備主義者(スペシャリズマー)というわけか。マイティ』 「は、はい」 『装備Bに切り替える』 「分かりました」 マスターがコンソールを操作する。 マイティはウイングユニットを丸ごと切り離すと、浮島の一つに着地。シロにゃんにコントロールが移ったウイングユニットは、ランディングギアを浮島に落とす。 『サイドボード展開。装備変更』 マイティの脚からブーツが消え、代わりにランディングギアが瞬時に装着される。肩と大腿のプロテクター、そしてひしゃげた胸部アーマーがポリゴンの塵と化し、ふくらはぎのアクセサリポケットが肩に移動。 武装にも変更が加えられた。アルヴォPDW9が消失し、カロッテTMPが出現。 左手首のガードプレートが、右手首同様ライトセイバーに代わる。 予備武装としてランディングギアにバグダント・アーミーブレードを装備。 最後に、天使のような翼が背中から生える。「白き翼」だ。 『飛び方は覚えているな』 「はい。さんざん練習しましたから」 『よし、行け』 ひと羽ばたき。それだけで、マイティは相手のストラーフの立つ浮島へ急速に接近した。 バララララララ 接近しつつTMPを撃つ。 ストラーフはまたもや消失。真左に反応。 左を向いて確認する隙も惜しんで、マイティは反射的に左手のライトセイバーをオン。そのまま切り付ける。 「おっと」 ストラーフは、上、に避けた。 間違いない。こいつは飛べるのだ。 どうやって? 『原理は不明だが瞬間移動が主な移動手段だ。姿勢制御による若干の移動を、頭と二の腕 のブレードと手足でやっている』 マスターが解析した。 なんて飛び方! 後方からがっちりと拘束される。 「おしまいね」 ストラーフがくすっ、と笑う。 鎌が首筋に当てられようとする。 マイティは両肘で相手の腹を打つ。 「やばーん!」 飛び去りながら、ストラーフが叫ぶ。 「うるさいっ」 マイティはTMPを精密射撃。 しかし鎌をくるくると回転させ盾にされる。 二体のぷちマスィーンズが反撃の連射。 マイティは白い翼を前方で閉じる。 翼の表面に銃弾が当たる。が、ダメージは無い。翼は盾にもなるのだ。 「ばあ」 翼を開いた途端、目の前に舌を出したストラーフ。瞬間移動だ。 ガキンッ! 突き出された鎌を、TMPで受ける。TMPは壊れて使い物にならなくなった。 ライトセイバーを伸ばす。ストラーフはあろうことかぷちマスィーンを盾にして後退。マスィーンズは爆砕。ポリゴンになって消える。 「マスター、瞬間移動のパターンは!?」 『今のところ直線距離でしか移動していない』 つまりいきなり後ろに回り込まれることは無いということ。だが、横に移動した後、後ろに、と二段階を踏めばそういった機動も出来てしまう。 あまり意味が無い。 「そうよ、この瞬間移動は自由自在なのよ」 マイティの懸念を見透かしたかのように。ストラーフは笑った。 「しかも」 真横。 「何度も使えちゃう」 真後ろ。 「くうっ……!」 マイティは宙返り。ランディングギアでオーバヘッドキックを浴びせる。 「きゃんっ!?」 頭に命中。ストラーフは急速に落下する。マイティはアーミーブレードを両手に装備。 「やったわねぇっ」 浮島を蹴り、目の前に瞬間移動。 予想通り! マイティはブレードを振り下ろす。f 瞬間移動した直後は瞬間移動できない。当てられる! しかし、ストラーフは消えていた。 「予想通り」 頭上から声。姿勢制御による限定機動! 「お返しよ♪」 頭をぶん殴られ、マイティは一瞬気を失う。 屈辱。殴られるのは一番そう。これは人間も神姫も変わらなかった。 「シロにゃん!」 「にゃーっ!」 いつのまにか接近していたウイングユニットがストラーフに体当たりを仕掛ける。 「そんなハッタリ無駄!」 ズバッ 鎌で一刀両断。ウイングユニットは消えてしまう。 『主義と固執は違うのよ』 ストラーフのオーナーが言う。 『何を……』 『通常装備だけではおのずと限界がある。あなたも薄々感づいているはず』 『何が言いたい』 マスターは苦虫を噛み潰したような顔をした。 『あなたの実力ならファーストには行けるでしょう。でも、ファーストでは固執は許されないわ。認められたあらゆる手段を使わなければ勝てない場所よ』 『アドバイスのつもりか』 『あなたがあの片足の悪魔と戦いたいのなら、ね』 『……!!』 その名前が出てきたことに、マスターは驚きを隠せなかった。 モニターから嫌な音がした。 ストラーフの鎌が、マイティの額を刺し貫いていた。 驚愕に目を見開くマイティ。ポリゴンの火花を撒き散らして、消滅。 『試合終了。Winner,クエンティン』 マスターは初めて、相手の神姫の名前を知った。 マスターはしばらく、コンソールに手をつきながら前を見つめていた。 ハッチの開いたポッドに座り込みながら、マイティはおどおどするしかない。 「帰るぞ」 唐突にそういわれたので、マイティは立ち上がる際転びそうになってしまう。 ねぎらいの言葉を掛ける店長も無視して、マスターは足早に店を出た。 了 前へ 先頭ページ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1194.html
回の00「不変ではいられない僕ら」 2037年9月。高校二年の夏休みを満喫しきった藤原雪那(ふじわら・せつな)は、その長い休暇のほとんどを自分の武装神姫、マオチャオのティキと共に過ごした。 例えば初めて大きな大会に参加してみたり、ティキをつれた家族旅行に出かけたりなど。 当然、今までに知り合った仲間たちとの交流も大切にし、何かのたびに待ち合わせては地元の神姫センターなどに通ったりもしていた。何も変化が無かった、というわけではないが。 特別な何かがあった訳ではないが、それでも昨年までとは違う夏休みを終え、それでも厳しい残暑に打ちのめされながらも、一年前では予想もしていなかった新たな習慣が繰り返されている。 先週も一人で都内にまで足を伸ばし、ホビーショップ・エルゴでバトルをしたばかりだった。エルゴでの、初めてのシルヴェストルのお披露目をかねたそのバトルは――なんと言うか、散々な目に遭わされたのだが。 そして3連休の真ん中日曜日、シルヴェストルの改良もあったので雪那もティキも空調の利いた自室にこもっていた。 「そう言えば……」 細かいパーツに苦戦しながら、雪那は口を開く。雪那の手伝いをしているティキは、自分のオーナーの言葉に視線を向けて反応した。 「……そろそろこの家に来て一年がたつんじゃないの?」 「えーっと、うーん?」 なにやら考え込み始めるティキ。 神姫のこういった見せ掛けの記憶の揺らぎは、人とのコミュニケートを潤滑にするための、いわば機能の一つだ。 記録を参照するだけなのだから、わざわざ考え込むような、思い出すかのような時間は必要ない。しかし、そうある方が人間はその“個体”と“対話”した気分になるものだ。 「そうですよぉ! 今日でちょうど一年になるのでっすよぉ♪」 思い出し、そしてティキは飛び跳ねて喜ぶ。 「そっかー。じゃあ、今日がティキの誕生日だなあ」 作業を中断し、大きく伸びをしながらティキに微笑む。 「なんかお祝いでもしなきゃね」 「お祝いですかぁ!」 目をきらきらと輝かせるティキ。それに、どうしようかねー、といいながら雪那が頭を傾げていると、呼び鈴の機械音が響く。 この時間雪那の母、藤原舞華(ふじわら・まいか)は自宅に接している店舗の方に居る。その事を知っている人ならば、たとえ郵便公社の配達員でさえ店舗に行くはずなのだが、なぜか自宅の呼び鈴が鳴った。 「僕に、かな?」 ティキに向けてそう言うと、雪那は玄関に向かう。 しかし程なくして自室に帰ってきた雪那は、怪訝な顔で大きな段ボールの箱を抱えていた。 「? 何なのですかぁ?」 なんとも形容しがたい表情の雪那に、ティキが質問する。 「……それが、なんて言うか」 歯切れが悪い。 「?」 「ティキ宛の、宅配物なんだ。……しかも親父から」 ほぼ時を同じくして、ここは結城邸。 「で、あの男の子とはどうなったの?」 その顔には隠そうともしない好奇心でいっぱいになっている。 その朔良=イゴール(さくら・――)に、少し寂しげな顔を見せて結城セツナは答える。 「多分、フラれちゃった。かなあ……」 「多分? かなあ、って?」 「はっきり言われたわけじゃ、ないから」 セツナはそう言うと、自分のカップのふちを指でなでながら話し始めた。 さらに同時刻。 式部敦詞(しきぶ・あつし)は自分の部屋で昨日の事を思い出し、また怒りを顕わにしていた。 「ったく、あのトウヘンボク! あんなんだったらまだ朴念仁の方がましだ!!」 自身の神姫、きらりとTVゲームをしながら昨日から何度目かにもなる言葉を繰り返す。 「そんな事言っても、仕方が無いでしょう? マスターだって雪那さんの言い分、納得してたじゃない」 人が使うものとは大きさも機能もまるで違うコントローラを駆使しながら、きらりは言った。 「そうだけどよー」 「大体マスターは司馬さんを応援してたんじゃない。だったら雪那さんの考えも、歓迎こそすれ責めるのはどうかと思うわ」 ここで言う司馬とは神姫を通して知り合った友人、司馬仙太郎(しば・せんたろう)の事である。 「いや、別にオレは司馬のダンナを応援してるわけじゃネーよ?」 「アレ? 違うの?」 「オレは周りがハッピーになれば良いと思ってるだけだ。だから、誰かを好きな奴がいて、そいつと付き合えるようになるならそれが良い、てだけ。司馬のダンナが結城を好きなら応援するし、だけど結城が雪那を好きなら雪那をたきつけるさ」 それって立派な三角関係の出来上がりだよ? 己のマスターのその言い分を聞き、どこら辺がハッピーなのかきらりにはチョット理解出来なかった。それでもあえて口にはしなかったが。 「つまりさ、雪那が結城の事が好きになるなら、それでそこの二人はハッピーだろ? ま、司馬のダンナは泣く事になるけど。でも万が一、結城が司馬のダンナの事好きになるなら、それでもハッピーじゃん。でさ、結城が司馬のダンナを好きになるよりも、雪那が結城の気持ちに応える方が、確立としては高いと思ったわけ。なのにさ、結城の気持ちに気付いてないならまだしも、只はぐらかしていたって言うアイツは、ヤッパリどうかって思うわけよ」 器用に自分の自機を操作しながら、敦詞は思う所を吐き出す。 敦詞の意見が正しいのかどうかはさておき、それでも敦詞の思いをきらりは理解した。 しかし昨日、雪那の言い分も聞いてしまったわけだから、雪那も考えも一応理解しているわけで。 きらりは途方にくれる。 その途端、きらりが操作していた機体が、敵機に撃ち落されてしまった。 「でもそれって、全部憶測なんでしょ?」 そう言って、朔良はわずかに残ったカップのお茶を飲み干す。 「まあ、ね。あくまでそういう風に感じた、ってだけ。それ以上は別に避けられているわけでもないし」 その会話をそばで聞いていたセツナの神姫、海神ⅡY.E.N.N(わだつみ・せかんど・わい・いー・えぬ・えぬ)こと焔(えん)は、実は気が気じゃなかった。 焔は昨日、雪那と敦詞の会話を偶然にも聞いてしまっていた。しかもその後に敦詞に見つかってしまい、セツナには秘密だと一方的に約束されてしまった。 実際問題、セツナと敦詞では、セツナの方が焔の中では上位に存在している。オーナーの友人でしかない敦詞より、オーナーであるセツナの方が優先されるのは当たり前だ。 しかし、だからと言って、その会話のありのままをセツナに話してしまうのは、あまりにも憚れた。 決して大げさな話ではない。大それた決意でもない。でもだからこそいえない事もある。 「ま、あんまり考えていても、なんともならないわね。この話はこれでおしまい」 セツナのその一言に、焔は安堵の息を吐く。その話題が長引けば、ぼろを出す危険が増すだけだ。 「で、今日は本当は何の用なの?」 まさかその話題だけで家まで訪ねて来たわけじゃないのでしょう? と、セツナは空になったカップにお茶を注ぎながら朔良に促す。 朔良は、ヤッパリ判ってた? と、茶化したように言うと、言葉を続けた。 「実はね、セツナに引き取ってもらいたいものが有ってサ」 そう言うと朔良はかばんの中から小さな箱を取り出す。 「実は、私も武装神姫やってみたいと思ってさ、ちょうど良いからってこれを注文したんだ。……だけど、これが届いた頃には、興味が無くなっちゃったんだよネ。まぁ、色々理由はあるんだけど、それは追求しない方向で。で、何もしないで寝かしちゃうのもこの娘に悪いから、有効に活用できそうな人に、って思って」 「って、それってリペイント版の!」 朔良が取り出したその箱には、MMS TYPE DEVILと印刷されていた。 話は雪那とティキに戻る。 今は亡き父の名で送られてきたその箱を前に、雪那とティキは何も出来ずにいた。 冷静に考えれば父、修芳が生前に日時指定して送った物だろう。だが、判ってはいても一寸した不気味さを醸していた。 ……少々時期がずれたとはいえ、夏場という季節のせいもあるかもしれない。怪談の旬はやはり夏場であろう。 なにより、昨晩見た心霊番組がいけない。その内容をついつい思い出してしまう。 「……よし」 意を決して雪那はその段ボール箱に手をかけ、箱を封じているガムテープをはがし始める。 はたしてその中には、更なる段ボール製の箱が収められてあった。 しかし不気味さはさらに増す。 何が不気味と言えば、その段ボール製の箱は、その見える全てを完膚無く、一部の隙も無く、真っ黒に塗りつぶされているのだ。 ティキは恐怖に震えながら、ぎゅっ、と雪那の腕にしがみつく。 「は……ははは。一体、これは何なんだろうね」 引きつった笑いを浮かべながら、雪那は恐る恐るその箱を取り出す。 案外、軽い。 箱の大きさの割には重くは無い。 持ち上げて裏も見てみるが、案の定裏面も一切の余白も無く真っ黒に塗りつぶされてあった。 雪那はそっ、とその箱を部屋の真ん中に置く。 「……どうしようか?」 ティキに聞いても返事は無いだろうと予測してはいたが、それでも思わず聞いてしまう。そして予測をまったく違えることなく、ティキはただ雪那につかまって震えているだけだった。 埒が明かない。そう思った雪那は、頭を振ると勢いに任せてその箱を開封する。 恐る恐る覗き込む雪那の目に、どこかで見たようなブリスターパックが入る。 「???」 いぶかしみながらパックを引っ張り出す。 雪那によって姿を現したそれをティキは覗き見る。そしてそれを確認した途端―― 「みぎゃぁぁぁぁぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 すさまじい悲鳴を上げて、部屋の隅に逃げ出した。 雪那とティキが目にしたそれは 一週間前エルゴに行った際、ティキをデータ上とはいえ破壊ギリギリまで追い込んだ、ネメシスという名の神姫と同型同色の 黒い、アーンヴァル。 トップ / 次回
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2503.html
キズナのキセキ ACT1-12「ストリート・ファイト その1」 □ 戦いが始まる。 四人は一斉に物陰へとダッシュした。 リアルバトルは実際に銃弾が飛び交う。そばにいたらただではすまない。 ティアを戦場に残すことにためらいを感じながらも、俺は物陰に身を隠す。 少し離れた壁際に、頼子さんの姿が見える。 「マグダレーナの方、頼めますか!?」 「了解よ。……三冬! マグダレーナを押さえなさい!」 「承知しました」 俺の無理なお願いに、頼子さんと三冬は即答してくれた。 相手は得体の知れない凶悪な神姫だというのにもかかわらず。しかし、頼子さんからはこの対戦を楽しんでいる節すら感じられる。 どちらにしてもありがたい話だった。 「ティア。ストラーフを引きつけて、マグダレーナと距離を取れ」 『了解です』 ティアの返事がワイヤレスヘッドセット越しに聞こえた。 今回は、今までに経験したことがない異質なバトルであるが、二対二の状況であればなんとかなるだろう。 勝てなくてもいい。 時間を稼ぐのが目的なのだ。 菜々子さんと接触する直前、大城に携帯端末からメールで連絡を入れた。 しばらく待てば、大城は警察を連れてここにやってくるはずだ。 ■ 今日のバトルはいつもと勝手が違う。 いつもはゲームセンターでのバーチャルバトルだから、試合後のダメージは気にしなくてもいい。 でも、今日のリアルバトルでは、そうはいかない。ダメージは自分の身体にも装備にも残ってしまう。いつも以上にしっかりと回避しなくちゃいけない。 でも、リアルバトルに気後れすることは、わたしはなかった いつもの訓練はだいたいマスターの部屋でやっているし、朝のお散歩の時には公園を全力で走ったりもする。現実で走り続けることには慣れている。 ただ、少し心細いのは、武装。 いつもはマスターがサイドボードから武器を次々に送り込んでくれるけれど、今はそうはいかない。 わたしは両手に持ったハンドガン一丁とナイフ一本だけで、ストラーフBisを相手にしなくてはならない。しかも、ハンドガンは弾を撃ち尽くしたらおしまいだ。 いつもより慎重に戦わなくては。 必ず隙を見せる瞬間はあるはず。その時にナイフを閃かせれば、勝つことができるかも知れない。 いいえ、きっと勝てる。 勝って、菜々子さんの目を覚まさせなくちゃ。 そうでなきゃ、ミスティがかわいそう。 だって、今わたしが相手にしているのは、神姫に見えなかったから。 ◆ 三冬とマグダレーナは対峙したまま動かない。 両者とも、お互いを強敵と踏んでのことか。 さぐり合うような時間、空間の緊張は刻一刻と増加する。 その空気を破ったのは、久住頼子の指示だった。 「三冬! 小細工は抜きよ! いきなりKOFモード!!」 「承知!」 短く応えた三冬。 その拳が炎に包まれた。 ハウリン型がデフォルトで身に付けている必殺技「獣牙爆熱拳」である。 三冬は、右の拳を肩と同じ高さに持ち上げ、肘を背中に引いた。 上半身を捻って半身になりながら、マグダレーナを見定めた。 「いくぞ……獣牙爆熱……」 右拳を前に鋭く突き出すのと同時、脚が地を蹴り、また同時に背部のスラスターを噴射、爆発的な加速で飛び出した。 「バアアアァァン・ナックルッ!!」 ……それは、往年の格闘ゲームの技であったという。 三冬は拳を突き出したまま、地表すれすれの超低空を翔け抜け、マグダレーナに突進した。 対するマグダレーナは余裕。 来ると分かっているパンチをかわせない神姫ではない。 わずかに身を翻し、燃えさかる拳をやりすごした。 しかし、三冬もそれだけで終わらない。 今度は左拳をフック気味に振るいながら、マグダレーナを追う。 「ボディが……甘い!」 ……これもまた、往年の格闘ゲームの技であったという。 左拳をなんなくかわされた三冬であったが、それだけでは止まらない。 右拳も同様にボディを狙うフック、そこからさらに右のアッパーにつなげる連続技である。 だが、マグダレーナは矢継ぎ早に繰り出される炎拳を、次々とかわした。 そして、大振りのアッパーをかわした瞬間に生まれる隙。 見逃さない。 マグダレーナは手にした燭台型のビームトライデントを上段に構え、振り下ろす。 しかし、三冬もただ者ではない。一歩踏み出し、燭台の根本を腕のアーマーで受け止めた。 「!?」 驚いたのはマグダレーナ。 燭台を受け止められた次の瞬間、マグダレーナの身体は宙に浮いていた。 燭台と三冬の腕の接点を軸に投げ飛ばされたのだ。 ところが三冬は、特に力を込めた風もない。 なにがどうなったのか。 疑問を覚えつつ、マグダレーナは空中で姿勢制御、背部装備のバーニアを噴射し、一気に距離を取る。 地表で、三冬の構えが見えた為だった。おそらくは対空攻撃の予備動作。 次の攻撃を悟られ、距離を取られた三冬であったが、そんなことは気にもとめない風に、悠然と構えを取る。 三冬にしてみれば、今の投げで大きな目的を果たすことができた。 マグダレーナに距離を取らせた。すなわち、マグダレーナと菜々子の神姫を分断することができたのだ。 マグダレーナと菜々子のストラーフは、ある程度のコンビネーションも可能だと考えられる。 対して、三冬とティアは今結成したばかりの急造ペアだ。コンビネーションなど望むべくもない。一対一の状況に持ち込むことが寛容である。だからこそ、ティアのマスターは、マグダレーナと距離を取るように、ティアに指示したのだ。 「なるほど……剛柔自在というわけか。むしろ、派手な技に隠された柔の技こそ、そなたの本質か」 マグダレーナがしわがれた声で感嘆する。 いままで、『狂乱の聖女』を投げ飛ばすことができた神姫など、何人いただろうか。 応えた三冬は、隙のない口調。 「我が奥様直伝の太極拳。最凶神姫と名高い貴様とて、見切れるものではない」 「確かに、受けてみなければ分からなかった……見切るのは骨が折れよう」 「技を見切る余裕など与えぬ」 「くくく……どうかな。その技、とくと見させてもらおうか……行け、スターゲイザー!」 マグダレーナが空いている左手をさっと振り上げる。 それと同時、彼女の両側に捧げられた十字架「クロスシンフォニー」が持ち上がり、銃火器としての役割を与えられる。 「クロスシンフォニー」を支えるのは細い腕。 それは背部の二つの大きな目玉のような装備につながっている。まるで、大きな目の形をしたランプの化け物が腕を持ち上げたかのようだ。 その巨大な目玉が光を放つ。 左右二体のランプ型がマグダレーナから分離した。 この二体こそが「スターゲイザー」……マグダレーナが使役するサブマシンである。 スターゲイザーは数瞬、その場で浮かんでいたが、不意に急加速し戦場に解き放たれた。 正面で構えるハウリン型に向かって襲いかかる。 □ マグダレーナが言い放った言葉……「スターゲイザー」を耳にして、俺は思わず視線を向けてしまう。 はたして、「スターゲイザー」の正体は、マグダレーナの背部にマウントされていた、二体のサブマシンだった。 神姫本体をサポートするサブマシンの存在は、武装神姫では珍しいものではない。ハウリンやマオチャオに付属するプッチマスィーンズや、エウクランテとイーアネイラの様に武装が変化してサブマシンになるもの、ランサメントとエスパディアの武装が合体して大型のロボットになる例もある。 だから、スターゲイザーの正体がサブマシンというのは、ある意味拍子抜けだった。 マグダレーナは、攻撃をスターゲイザーたちに任せて、高見の見物を決め込んでいる。 なんという余裕。 いくら二対一とはいえ、三冬がサブマシンに後れを取るとは思えない。彼女はファーストランカーなのだ。サブマシンを使う神姫と対戦した経験はいくらでもあるだろう。 サブマシンなど一瞬で蹴散らされてもおかしくはない。 ところが、三冬は苦戦していた。 スターゲイザー二体による波状攻撃に苦しめられている。 時には近接、時には銃撃。二体のサブマシンは、巧みな連携で三冬の動きを封じ込めていた。 三冬が攻撃に出ようとすると、途端に距離を取る。 三冬が前に出ようとすると、「クロスシンフォニー」の銃撃で牽制される。 冷静な三冬も苛立ちを募らせているのがよく分かる。 不意に、俺の胸に疑念が沸いた。 スターゲイザーは、サブマシンの動きにしては、巧み過ぎやしないか? サブマシンは、あくまでも神姫の補助に過ぎない。サブマシンを使う神姫がどんなに巧妙に戦いを組み立てても、相手神姫とサブマシンが互角以上の戦いをすることはないのだ。 だが、スターゲイザーはファーストランカーの三冬を相手に互角の戦いをしている。 強者相手に、なぜそこまで戦える? スターゲイザーの動きを注意深く見てみれば、明らかにサブマシンの範疇を越えている。 ケモテック社のプッチマスィーンズのように簡易AIを仕込んだサブマシンもあるが、それでもスターゲイザーの動きは異様だ。 操られているのではなく、まるで意志があるかのような、生物的な動き。 コントロールするマグダレーナの電子頭脳の要領が大きいとも考えられるが……。 そこまで走らせた思考に、俺は無理矢理ブレーキをかけた。 今はバトル中だ。しかも、初体験のリアルバトル。 ティアの戦いに意識を集中する。 ストラーフBisの動きは、イーダのミスティと違い、直線的で効率的だった。 『七星』の花村さんに聞いた、初期のストラーフのミスティがしていたのが、こんな動きだったのかも知れない。 だが、今のストラーフBisの動きは読みやすい。攻撃を「ジレーザ・ロケットハンマー」 に頼りきりだからだ。超重の、それもロケットブースター付きのハンマーであれば、攻撃方法は至極限定される。 縦に叩きつけるか、横に振り回すか、それだけでしかない。たとえストラーフの副腕であっても、一方向に振り抜くまでは切り返すことさえできないのだ。 当たれば致命的だが、回避が得意なティアには当たるはずのない攻撃である。 ティアの回避機動には余裕すら見える。 それでもティアが攻め手に欠けるのは、ストラーフBisの追加装甲が攻撃を阻むためだ。 よほどの隙を見いださない限り、有効なダメージは望めない。 ゆえに、この戦いは拮抗していた。 ◆ 「さすがはティアと言ったところね……でも、これならどう?」 菜々子がヘッドセットをかけ直し、指示を出す。 「ミスティ、踏み込んで!」 □ 「ティア、注意しろ。何か仕掛けてくるぞ!」 『はい!』 内容は聞こえなかったが、菜々子さんが何か指示を出した。 状況を打開する一手であることは間違いない。 こちらは時間稼ぎのバトルだが、菜々子さんたちは時間に余裕がないはずだ。なぜなら、裏バトルの自分たちの出番までに会場に入らねばならない。 それに、あんまり派手に暴れて見つかるのも得策ではないはずだ。特に桐島あおいは以前から裏バトルに出入りしているから、警察に捕まったりすればとても困るだろう。 だから、仕掛けてくるとすれば、向こうからなのだ。このバトルを早く終わらせるために。 ストラーフBisは縦横にハンマーを振るう。 ティアは余裕を持って避ける。 同じ展開が続く、と思ったその時。 「今よ!」 菜々子さんの鋭い指示がここまで聞こえた。 ストラーフBisは無言で突進してくる。いつもより一歩深く踏み込んできた。 「ジレーザ・ロケットハンマー」を振り下ろす。 それが避けられないティアではない。軽くバックステップしてかわす。 だが、ハンマーがアスファルトの路面を叩くのと同時。 ストラーフBisがさらに一歩前に出た。 この動きは想定外だ。 ティアはさらに下がろうとする。 しかし、それよりも早く、地面に叩きつけた反動を利用し、切り返したハンマーが、すくい上げるようにティアを襲った。 回避できないタイミングに俺は一瞬焦る。 「ティア!」 思わず自分の神姫を呼ぶ。 ティアは振り上げられたハンマーの一撃で宙を舞った。 しかし、空中で宙返りを決めると、何事もなかったかのように着地する。 「な……」 驚いたのは菜々子さんの方だった。必殺の一撃は命中したと思っただろう。 ティアはハンマーが激突する瞬間、自らハンマーの上に乗って、振り上げられる力に逆らわず後方に跳ねたのだ。 ひやひやさせる。 無事着地するまでは、俺も焦っていた。 「ティア、大丈夫か?」 『はい。大丈夫です。走れます』 「よし」 ティアの落ち着いた声を聞き、ほっとする。 そして実感する。 少しの不安でも心がすり減らされる。これがリアルバトルの緊張感なのだ。 ■ マスターにはああ言ったけれど、わたしは少し違和感を感じていた。 いまさっき、ロケットハンマーに乗った右のレッグパーツ。 どこが悪いとははっきり言えないのだけれど。 なんだか圧迫されているような、熱を持っているような、そんな感覚。 でも、走るのに支障なさそうだったから、大丈夫、と答えた。 相手のストラーフBisは、わたしがハンマーの一撃に乗って距離を取った後、追撃には来なかった。 躊躇した、という様子でもない。 ただ単純に、菜々子さんが驚いていて、指示を出していなかったから動かなかった、という感じ。 なんだか嫌な感じがする。 神姫であれば、マスターの指示がなくても、自分で考えて行動する。 指示と指示の間は、神姫が自由に戦える。 だけど、目の前の神姫はそうしない。 まるで、ただの操り人形みたい。 わたしは不気味に思いながらも、動き出す。 相手が動かないなら、好都合。 今度はわたしから仕掛けて、活路を探る。 自分で考えながら戦う。それがわたしとマスターの戦い方だ。 ◆ 『ねえ、あそこの人の胸ポケット、見える?』 「ええ、見えるわ」 『あそこに神姫がいるでしょう?』 「いるわね。何か叫んでいるようだけど」 『少しうるさいわ』 「そう? 何を叫んでいるのかしら」 『それこそどうでもいいことよ。あの神姫、うるさいから壊してしまいたいの』 「今はバトル中よ?」 『うるさくてバトルに集中できないわ』 「……あなたがそういうなら、仕方がないわね」 『それじゃあ、あのウサギの隙を突いて、指示をちょうだい』 「わかったわ」 □ 「ナナコ! 目を覚ましなさい! ナナコ!!」 俺の胸元で、ミスティが菜々子さんに呼びかけ続けている。 しかし、菜々子さんは反応する様子さえない。 ミスティを無視している……というより、ミスティの存在を最初から認識していないかのようだ。 一体、彼女の身に何が起こっているのだろう。 横道に逸れそうになる思考を、無理矢理引き戻す。 まだバトルの真っ最中だ。 今度はティアが自ら仕掛けた。 俺の思惑通りにティアは戦ってくれる。こんな小さなところに、いままで一緒に戦ってきたティアとの確かな絆を感じる。 立ち止まっているストラーフBisの背後から、頭に向けて牽制の射撃。 ようやく反応したストラーフがティアの方を向く。 ティアがさらに攻める。 ストラーフの副腕「チーグル」は防御のため、上げられている。 そこをかいくぐるように、姿勢を低くしたティアが滑り込む。 すれ違いざま、手にしたナイフが閃いた。 ストラーフBisの素体下腹部に裂け目が走る。 最接近したティアに対し、ストラーフの脚、副腕、ロケットハンマーが次々に襲いかかった。 「わっ、わわっ」 あわてた声を上げながらも、ティアは華麗なステップさばきで、ストラーフの断続的な攻撃を次々と避ける。 ティアならば、この程度の攻撃で後れを取ることはない、と俺は確信している。 いつものミスティや、『塔の騎士』ランティスの攻め方がはるかに厳しい。 ならば行けるだろう、このリアルバトルという状況であっても。 俺は心を決めて、指示を出す。 「ティア、ファントム・ステップだ!」 『はい!』 ◆ そのころ、三冬はいまだスターゲイザー二体による波状攻撃に苦しめられていた。 こうも間断なく仕掛けてこられると、鬱陶しくてかなわない。 しかも、操っている本人……マグダレーナは高見の見物を決め込んでいる。 何を企んでいる。 向こうの方が時間に余裕がないはずなのに。 三冬もいい加減、我慢の限界が来ていた。 「奥様! そろそろケリを付けましょう!」 「そうね……もう少し何を企んでいるのか探りたいところだったけれど……いいわ、蹴散らしなさい、三冬! ストリートファイター・モード!」 「はっ!」 三冬の気合い声が響く。 見た目に何か変わったようには見えない。 変わったのは、技の体系だった。 三冬は、二体の一つ目ランプのようなメカを、できる限り引きつけた。 「いくぞ……竜巻旋風脚!!」 ……それは往年の格闘ゲームの技であったという。 三冬はその場で飛び上がると、右足を振り上げる。同時に、背部のスラスターに点火、三冬の身体を持ち上げつつ、右方向に回転させる。 結果、三冬は高速回転による空中回し蹴りを炸裂させる。 さすがのスターゲイザーも、この動きには対応できなかった。 引きつけられていた二体は、まるで渦に吸い込まれるように、三冬の蹴りを食らったように見えた。 目玉のついたランプ型のサブマシンは、二体とも地面に弾き飛ばされる。 初めての有効打であった。 三冬のバトルスタイルのコンセプトは、頼子の趣味丸出しである。 頼子は学生の頃、それも菜々子が武装神姫を手にした歳と同じくらいから、ゲームセンターのビデオゲームが大好きだった。特に、対戦格闘ゲームというジャンルが。 以来、今の歳になるまで、一貫してゲームが趣味である。武装神姫にも、ゲームの一種という認識で手を出した。 頼子は考えた。 武装神姫のスペックを持ってすれば、現実には不可能な、格闘ゲームの超人的な必殺技の数々を再現できるのではないか、と。 結果、三冬は近接格闘メインの神姫となり、俊敏な動作重視のカスタマイズが行われ、頼子が健康と趣味のために学んでいた太極拳と、数々の格闘ゲームの技を修得した。 デビュー当時はキワモノ扱いされた頼子と三冬であったが、いまやそのバトルスタイルは、『街頭覇王』の二つ名とともに畏怖の象徴になっている。 回転を止め、空中から降下してくる三冬。 この瞬間は無防備だ。 その隙を突いて、黒い影が突進、ビームトライデントを繰り出してくる。 三冬はとっさに腕アーマーで払おうとした。 が、何かがそれを押しとどめ、かわりに背部スラスターを噴射した。 後方へと飛び退き、ビームの刃をかわす。 意識しての行動ではない。 積み重ねた戦闘経験がさせた無意識の行動だった。 繰り出されたビームトライデントを捌こうとするなら、ビーム自体ではなく、出力されているビームの根本……今の場合なら、燭台部分を払わねばならない。 しかし、マグダレーナの攻撃は、それを許さない間合いだった。 だから三冬は飛び退くしかなかった。 なんという絶妙の間合い取り。 三冬が戦慄する中、マグダレーナは不適な笑いを浮かべ、言った。 「くくっ……制空圏は把握させてもらった」 「……そう来たか」 三冬は苦い表情で、再び繰り出されるビームの刃を回避する。 制空圏とは、格闘家が持つ、有効な攻撃を放てる間合いのことだ。 達人クラスの格闘技者ともなれば、自分の周囲すべての間合いを把握しており、間合いの内に入れば、必殺の攻撃を繰り出せる。 三冬ならば、自分の有効間合いに入った相手を、太極拳の動きでからめ取り、地面に引き倒すことが可能だ。 その間合いはすでに結界に等しい。 それを制空圏と呼ぶのである。 マグダレーナは、三冬の制空圏を把握していた。 三冬は一つ舌打ちをする。 スターゲイザー二体に手こずり過ぎた。おそらくあのサブマシンどもで、三冬の制空圏を計っていたのだ。 今のマグダレーナは、初撃の時の迂闊さは見られない。 ビームの刃だけを制空権圏に触れさせ、三冬の攻撃が触れられないギリギリの位置で攻めてくる。 三冬はマグダレーナの攻撃をかわすたび、眉間のしわを深めた。 「くそ……」 「なるほど、よく持っているが……これならどうだ? スターゲイザー!」 マグダレーナの一声に、倒れていたサブマシンが再起動した。 まずい。 ただでさえやっかいなスターゲイザーの波状攻撃に、マグダレーナの巧妙なビーム槍の攻撃が加わっては、反撃もままならなくなる。 焦りが三冬の表情を険しくさせた。 それでも三冬は構える。 ピンチの時こそ冷静に。 ゆるり、と大型のアームが円を描く。 太極拳の螺旋勁。太極拳の動作の根幹をなす、基本中の基本だ。 頼子奥様と共に、毎日毎日鍛練を積んできた。 表情から焦りが消える。 襲い来る三つの影。 三冬は動きを止めない。自らの修練を信じ、迎え撃つ。 ◆ 三冬とマグダレーナが激しい戦いを繰り広げる中、久住頼子は物陰から少し顔を出し、桐島あおいの位置を確認する。 彼女もやはり物陰に隠れているが、その距離は意外に近い。 よし、と自分に気合いを入れ、声を上げて話しかける。 「あおいちゃん!」 「……頼子さん……公式ランカーのあなたがこんなところに来るとは予想外でした」 「わたしはね、ファーストランカーである前に、菜々子の家族なのよ」 「なるほど……」 頼子が今日ここに来たのは、ただマグダレーナの相手をするためだけではない。 頼子はこの二年間、あおいと会うことはなかった。 だからこそ疑問に思っていた。 菜々子から伝え聞いた、あの夏の豹変ぶりを。 あおいの本当の気持ちがどこにあるのか、確かめなくてはならない。 それはきっと、菜々子を助け出した後に必要になるはずだから。 「あおいちゃん、もうやめなさい。こんな戦いは不毛なだけだわ」 「仕掛けてきたのはそちらです」 「それだけじゃない。裏バトルへの参戦、そして壊滅。そんなことをして何になると言うの」 「わたしには……わたしとマグダレーナには、目的があります」 そう言うあおいの口調が、先ほどとは違うことに、頼子は気付いた。 うすら笑いしながらの穏やかな口調ではない。 しっかりと意志を持った、真剣な言葉。 あおいちゃん、あなた……。 彼女は狂っているのではない。正気だ。異常に見えるあおいの行動はすべて、彼女の正常な意志のもとに行われている。 あおいの……いや、あおいとマグダレーナ、二人の目的を果たすために。 頼子は眉をひそめる。 マグダレーナは、あおいの目的を果たすためにいるのではないのか? あおいの言葉からすると、マグダレーナもまた、自ら目的を持って、自発的に動いているということになる。 「目的って……復讐? ルミナスを壊されたことへの恨みなの?」 「復讐なんて……ルミナスを壊したエリアを壊滅させたところで終わっています」 あおいの言葉に苦笑が混じる。 復讐、ではない? 頼子は、あおいの行動原理が復讐だと思っていた。 最愛の神姫を破壊せざるを得なかった、裏バトル界すべてへの復讐。 「復讐じゃなければ、何だっていうの?」 「言えません」 「なぜ?」 「頼子さんはわたしと共に戦ってくれそうにはないからです」 「そんな理由で……わたしだけでなく、他の仲間たちも遠ざけて、たった一人で……そうまでしなくてはならないことなの、あなたの目的とやらは!?」 「同じ事を、菜々子にも言われましたよ」 ちらりと見えたあおいの顔。 一瞬苦笑していたが、眼は笑っていない。 「すみませんが頼子さん。わたしたちの行く手を邪魔するならば、たとえあなただろうと容赦はしない」 真摯で真っ直ぐな口調。強い意志を宿す瞳。 頼子は確信する。 狂っているのではない。 明確な目的意識を持って、最凶の神姫マスターを演じながら、裏バトル界を潰しにかかっている……! 頼子は一つ深呼吸をすると、気持ちを落ち着かせる。 再びあおいを見る。 頼子の顔に、ベテラン神姫マスターの、凄絶な笑みが浮かんだ。 「ファーストランカー相手に、随分と余裕の発言ね、あおいちゃん」 「マグダレーナならば、たとえファーストリーグ・チャンピオンでも敵ではありません」 「大きく出たわね……痛い目見るわよ?」 頼子は三冬に視線を移す。 彼女のハウリン型は、サブマシン二体とマグダレーナを相手に苦戦中だ。 制空圏の範囲を測られ、防戦一方になっている。だが、三冬が防御に徹しているがゆえに、マグダレーナの方も攻めきれずにいる。 ならばやりようもある。 「三冬! 一気に蹴散らすわよ! サイコクラッシャーアタック!」 「承知!」 三冬の返事には、少しの安堵と開放感が混ざっていた。 次へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1062.html
第8話 「初戦」 「ンなーっはっはっはっはァ! ぅワガハイの最高傑作! バイオレント・ブラック・バニー! 略してB3(ビー・キューブ)よ! 今日は最高の成果を期待しておるぞォ!」 「サー、コマンダー」 「……なぁ、神姫のオーナーってのは皆あんなテンションなのか?」 「……私は今まで以上に遼平さんの事が好きになれそうです」 武装が揃ってから更に3日。 ネットで行える簡易バーチャルトレーニングで大体の動き方をマスターした俺とルーシーは、いよいよ初の実戦に参加する事にした。 ……と言ってもそう大げさな話じゃない。 今や武装神姫を扱った店は街のそこかしこにあり、神姫オーナーであればいつでも参加できるシステムを設置している店もあるのだ。 休日なんかにはちょっとした大会が開かれる事も多いようだが、普段行われるのは公式トーナメントやリーグ戦みたいなモノじゃなく、個人同士の草バトルって所だろう。 で、そんな俺たちの初陣の相手が、さっきからハイテンションで大騒ぎしてるオニイチャンってワケだ。 年は俺より少し若いくらいで、なんだかヘンなシミだらけのズボンにベスト、ご丁寧に頭には同じ模様のハチマキをしてる。 「アレはシミではなくて都市迷彩です。 それにハチマキじゃなくてバンダナですよ」 ルーシーが小声で注釈を入れてくるが、俺はそういうのに詳しくないんだって。 ま、そういう事に疎い俺でも分かるくらいにあからさまなファッションの軍隊フェチだった。 「退くな媚びるな省みるな! 敵前逃亡は問答無用で軍法会議! 兵士に命を惜しむ事など許されぬ! そう、お前の前に道はなく、お前の後ろに道が」 「そろそろ選手のご登録をお願いしたいのですが宜しいですか」 「あ、ハイ」 天井知らずに上がりっぱなしのテンションは、店員さんの必要以上に事務的な口調に大人しくなった。 っと、こっちにも来た。 「それでは、こちらにオーナー名と神姫のパーソナルデータ入力をお願いしますね」 キツめな感じの美人さんだけど、さっきと違ってにこやかだ。 どうやら店員さんもアレはやかましいと思ってたらしい。 えーっと、そんじゃ… オーナー名:藤丘 遼平 武装神姫:TYPE DEVIL「STRARF」 ニックネーム:ルーシー と、こんなトコかね。 『それでは両者、スタンバイ!』 さっきの店員さんによるアナウンスが入る。 「ビィィィ!キュウゥブッ! んGoGoGoGoォオゥ!!!」 「サー、コマンダー」 「んじゃ行くか、ルーシー?」 「ハイ。 あなたとなら、何処までも」 ……何処で憶えてくんのかね、そういうセリフ。 崩れたビルの立ち並ぶ廃虚をステージに、バトルはスタートした。 まずは索敵からか。 「相手のバッフェバニーは遠距離戦闘重視の重火器装備型…『ガンナー・ブラスター』です。 早めに接近しないと厄介ですね」 「初陣が真逆のタイプってのは嫌なもんだな」 「負ける気はありません…前方に反応」 緊張した言葉とほぼ同時、ビルとビルの隙間を縫うようにして何かが迫ってくるのが目に入った。 一瞬戸惑った俺が命じるより早く、ルーシーは大きく跳んで回避行動を取っていた。 着弾。 閃光。 爆発。 「…ミサイル?」 「誘導式ではないので、正確にはロケットですよ。 妄想スレ第2段の198さん、ありがとうございました」 「誰?」 「こちらの話です。 …来ますよ」 崩れたビルの残骸を乗り越えて敵が姿を現す。 左肩にはバズーカ砲、ロケットポッドを右肩に。 両手にはそれぞれガトリングガンと大ぶりのコンバットナイフを携え、のっしのっしと歩みを進めてくる……その顔は赤いスコープにガスマスクのせいで表情が読めない。 『ンなーっはっはっはァ! そこな新兵! こそこそ隠れて様子見とは兵士の風上にも置けぬ奴! このB3とワガハイが、フヌケた貴様らに戦場における鉄の掟というモノを叩き込んでくれるわっ!』 あーうるせぇ。 「ドンパチのルールブックにゃ不意打ち上等って書いてあんのか?」 『ムっふっフーン、モノを知らぬ奴め。 この世には『勝てば官軍』というすンばらしい言葉があるのだ! 勝った者にのみ全ての権利が与えられる! 即ちルールを決めるのもまた勝者! つまりすなわち勝利は勝ぁぁぁぁぁっつッ!』 「サー、コマンダー」 ……本格的にワケ分からんなお前ら。 「ま、向こうさんから来てくれたんなら探す手間が省けたな」 「そういう事を言ってる場合ですか」 すいっ、と持ち上げられたガトリングガンが狙いを定める前に、再び跳躍。 弾丸の雨が虚しくビルの壁を穿つのを尻目に、着地したルーシーがこちらに尋ねる。 「どうしましょう?」 「初の実戦なんだし……ここはやりたいようにやってみ」 「……了解」 『むヌぬっ、敵の眼前で作戦会議とは悠長な! 静かにせんかァ! ここは戦場だぞォ!』 相手オーナーの怒声を無視し、前傾姿勢になったルーシーは距離を詰め始めた。 ロケットポッドが迎撃を始めるが、最初の攻撃で誘導式でないと判っている。 最初から当たらない位置のモノは完全無視、被弾する位置にあるモノはサブマシンガンで撃ち落としていく。 その間、視線は相手に固定したまま。 『「なにー!?」』 くそ、向こうと俺の声がカブった。 つかルーシー、お前ちょっとスゴい? 距離が縮む事を嫌ったB3は後退を始めるが、なにしろこっちとは「一歩」の長さが違う。 あれよあれよと言う間に戦闘は至近距離でのそれに移った。 向こうもこの距離ではガトリングガンの取り回しは不可能だと悟り、もう1本コンバットナイフを取り出しての2刀流に切り替えた。 こっちもナイフ2刀流で斬り結ぶ! ……が、ルーシー自身の両手は空いているワケで。 サブアームが相手のナイフを押さえつけている間に、ひょいと掲げたサブマシンガンを相手の顔面に向けてブッ放しやがった。 ががががががっと派手な音がして頭が何度も揺れた後、B3は仰向けにぱったりと倒れた。 『んンNoおぉぉぉおおぉぉうッ!? B3! 応答せよびぃきゅうぅぅぅぅッぶ!』 「ルーシー、お前それちょっとエグい」 「勝てば官軍、負ければ賊軍……勝負の世界は非情なのですよ」 『衛生兵! えーせーへーえぇぇぇぇぇ!!!!』 しれっと言ってのける15センチ足らずのオモチャ。 コイツはやっぱり悪魔かなぁと思って嘆息した俺の視界で、動くものがあった。 「ッ……、」 どごおぉぉんっ! 突然起こった爆発に、俺の口から出かけた言葉が止まった。 スコープとガスマスクがダメージを緩和したのか、大の字になったB3の肩にマウントされたバズーカ砲から煙が昇り、射撃直後を物語る。 そして濛々と爆煙に包まれているのは……ルーシーの頭部付近。 「ルーシーっ!」 背筋の凍るような思いが俺の口を再び動かす。 「返事しろおい!」 「無事です」 冷静な声が響き、風に吹き散らされた爆煙の中からススけたルーシーの顔が見えた。 顔周辺のダメージはそんなものだが、片方のサブアームが手首の辺りから吹き飛んでいる。 どうやらそれを盾にして直撃を防いだらしい。 それを見てもB3は追撃しないし立ち上がらない。 どうやらバズーカは1発きりで、さっき与えた頭部への衝撃はオートバランサーか何かに影響を与えたらしい。 実質、勝負はここで決着ってワケだ。 ほっとした俺、ぽかんとしている相手オーナー、悔しげな表情のB3、無表情のルーシー。 なんだか妙な沈黙の後、ルーシーはおもむろにしゃがみ込んでB3のそばに膝を着くと、残ったサブアームを動かし始めた。 その手に握られているのは、ほとんど使う事もなく無傷に近いアングルブレード。 「はいはいストップストップ、もう終わっただろ。 こっちの勝ち」 俺の言ってる事を聞いているのかいないのか、ルーシーは見せつけるようにブレードを振り翳したまま動かない。 「こら、あんま脅かすなって」 刃に照り返る陽光を受けたB3の顔に、はっきりと恐怖の色が映る。 「ルーシー」 ぐっ、とアームデバイスのシリンダーが動く。 「やめろバカ!」 制止の声と風を一度に裂いたブレードが、鋭い音を立ててコンクリートの床に突き立った。 ……丸く湾曲した刃と床の隙間に、B3の白い首筋が挟まっている。 顔を上げれば、相手オーナーが白いハンカチを必死に振る姿があった。 「ンんバカモノおぉぉっ! 勲章ではなく命ひとつを持ち帰れば良いと教えたはづだろぉがっ!」 「サー、コマンダー」 「試合前と言ってる事が違うんだが……」 「アレがあの人たちの絆の形なのでしょう」 ひしと抱き合う(?)2人を眺めて、にこにこ笑顔のルーシー。 ……ホント、あの氷みたいな目ェしてた奴とは思えんね。 「……ちょっと、興奮しました」 俺の視線に気づいてか、わずかに肩を落とした。 人間で言えば『カッとなった』んだろうが……あんまコイツは怒らせない方がいいかも知れない。 「今、何か失礼な事を考えましたね?」 「いぃえぇメッソーもない」 「怪しいです」 「最愛のパートナーに信じてもらえないとはツラいなぁ」 ちゃかしたセリフに、テレたように小さく微笑む。 「最愛、ですか……嫌わないでくださいね」 「つまんない心配しない」 あっちほど熱烈じゃないが、こっちもちょっとイイ雰囲気。 ひとしきり泣いたり感動したりして気が済んだのか、向こうのオーナーが握手を求めてやってきた。 胸ポケットからはB3が覗いている……ちょっと微笑ましいな。 「いやいやいや諸ォ君! 今回は良い勉強をさせてもらったぞぉ!」 「ま、こっちも楽しかったよ。 ちょっとヒヤっとしたけどな」 「うむ! 記念すべき初陣を勝利で飾れなかったのはヒッジョーォに無念ではあるが、今日この日の戦いはワガハイとB3の輝ける第1歩として生涯この胸に刻もうぞ!」 「お前あんだけ偉そうな事言っといて自分も初心者かコラ」 バカ笑いするミリタリーマニアから視線をそらすと、ルーシーがB3の頬をそっと撫でている所だった。 「さっきは怖がらせてごめんなさい。 貴女の心優しいオーナーに、最大限の感謝を忘れずにね」 「……イエス、マム」 ルーシーの柔らかい微笑みと、風にかき消されそうなB3の声を幕に、俺たちの初陣は終わった。 「ついでにそちらのオーナー。 差し出がましいようですが『バイオレント』は『Violent』で頭文字は『B』ではありません。 その子の為にも早めの改名をお奨めします」 「ンなんとぉーっ!? ワガハイ一生の不覚ぅッ!」 「サー……」 その後、彼の神姫は『バーニング・ブラック・バニー』に改名したとかしないとか……ちゃんちゃん。
https://w.atwiki.jp/2chbattlerondo/pages/170.html
キャンペーン バトルロンド3周年感謝祭 西園寺アイランド? サマーフェスタ2009 極秘ファイルを入手せよ! バトルロンド2周年感謝祭 ウインターフェスタ(2008) 2nd Anniversary サマーフェスタ バトルロンド1周年感謝祭 ウィンターフェスタ 第五弾、第六弾参戦発表記念? 1st Anniversary 初回ログインキャンペーン バトルロンド3周年感謝祭 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/anniversary03/ 期間2010年4月22日(木)14 00~2010年5月10日(月)10 00まで キャンペーン内容 新人オーナー応援キャンペーン・試用チケット8枚プレゼント! アイテムプレゼント! スタッフ神姫を探せ! 期間限定特別ミッション「神姫プラネットを開拓せよ!」 お詫び/3周年イベントミッション無期延期のお知らせ 10.04.28バトルロンド3周年感謝祭「神姫プラネットを開拓せよ!」の実施により、サーバーアクセスに時間がかかる不具合が発生しておりますため、本イベントは無期延期とさせていただきます。 上へ戻る 西園寺アイランド? 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/sp_mission02/rule.html 期間2010年3月18日(木)14 00~2010年まで3月31日(水)10:00まで ※3月30日(火)10 00から延長 詳細は西園寺アイランド?のページにて。 上へ戻る サマーフェスタ2009 期間限定のイベントミッションや、アイテムプレゼントもございますので、すでにバトルロンドで遊んでる方も、 これからバトルロンドを始める方もふるってご参加下さい!! 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/summer_festa02/index.html 期間2009年7月23日(木)12 00~2009年9月8日(火)12 00まで ※9月1日(火)12:00から延長 キャンペーン内容 イベントミッション「サイバーテロから街を救え!」 アイテム「鈴リボン(黒)」プレゼント!! バッテリー消費量半減! 詳細はサマーフェスタ2009のページにて。 上へ戻る 極秘ファイルを入手せよ! トレジャーアイランド消滅まであとわずか!極秘ファイルを探し出せ! 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/sp_mission/index.html 期間2009年6月18日(木)12 00~2009年6月29日(月)12 00まで キャンペーン内容 トレジャーサーチ 神姫オーナー一致団結せよ! 未確認物体あらわる! 詳細は極秘ファイルを入手せよのページにて。 事前に常設ミッションとして設置されていたトレジャーアイランドの情報はこちら。 上へ戻る バトルロンド2周年感謝祭 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/anniversary02/ 期間2009年4月23日(木)PM12 00~2009年5月25日(月)PM12 00まで キャンペーン内容 揃えてGET!ビンゴバトル! スタッフ神姫を倒せ! ログイン時、アイテム「バースデーキャンドル」プレゼント バッテリー消費量半減 詳細はバトルロンド2周年感謝祭のページにて。 上へ戻る ウインターフェスタ(2008) 期間限定のイベントミッションや、アイテムプレゼントもございますので、すでにバトルロンドで遊んでる方も、 これからバトルロンドを始める方もふるってご参加下さい!! 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/winter_festa02/index.html 期間2008年12月19日(金)12 00~2009年1月19日(月)12 00まで キャンペーン内容 イベントミッション サイバーフロント強襲作戦 アイテム「結晶の髪飾り」プレゼント! バッテリー消費半減! 詳細はウインターフェスタ2008のページにて。 上へ戻る 2nd Anniversary 武装神姫発売二周年記念!! 公式ページhttp //www.busou.konami.jp/anniversary/an2008.html 期間2008年9月12日(金)~2008年9月24日(水)12 00まで キャンペーン内容 その1 武装神姫オリジナル壁紙配信!(現在も入手可能) その2 アイテム「薔薇の髪飾り」プレゼント! 上へ戻る サマーフェスタ 期間限定のイベントミッションや、アイテムプレゼントもございますので、すでにバトルロンドで遊んでいる方も、 これからバトルロンドを始める方もふるってご参加ください!! 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/summer_festa/index.html 期間2008年7月18日(金)PM12 00~2008年9月1日(月)PM12 00まで キャンペーン内容 イベントミッション「ドッキドキ・トレジャーアイランド」 ログイン特典「イヤリング(ムーン)」プレゼント!! バッテリー消費半減 詳細はサマーフェスタのページにて。 上へ戻る バトルロンド1周年感謝祭 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/anniversary/index.html 期間2008年4月23日(水)PM12 00~2008年5月7日(水)PM12 00まで キャンペーン内容 スタッフ神姫を倒せ 魚拓ランキング アイテム「腕時計(白)」プレゼント バッテリー消費量半減 フブキ立体化プロジェクト始動 上へ戻る ウィンターフェスタ バトルロンドを遊び込んでいる人も、これから“ちょっと始めようかな?”という人も、この冬、バトルロンドをプレイする人みんなが“得”しちゃう4つの特典を紹介! 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/winter_festa/index.html 期間2007年12月21日(金)PM12 00~2008年1月7日(月)PM12 00まで キャンペーン内容 イリーガル・レプリカ討伐指令 アイテム「雪ダルマ」プレゼント バッテリー消費量半減 神姫ポイント購入者に抽選でプレゼント 詳細はウィンターフェスタのページにて。 上へ戻る 第五弾、第六弾参戦発表記念? アイテム「ローズブーケ(青)」をプレゼント!2008/3/21 12 00~4/7 12 00の間にバトルロンド・ジオラマスタジオにログインした方全員に、アイテム「ローズブーケ(青)をプレゼントいたします! 上へ戻る 1st Anniversary 武装神姫発売一周年記念! 公式ページhttp //www.busou.konami.jp/anniversary/index.html 期間2007年9月7日(金)PM12 00~2007年10月8日(月)PM12 00まで キャンペーン内容 その1 「武装神姫一周年記念オリジナル壁紙」プレゼント(現在も入手可能) その2 アイテム「ローズブーケ(黄)」プレゼント 上へ戻る 初回ログインキャンペーン 初回ログイン 無料パーツプレゼントKONAMI IDを作成し、武装神姫(バトルロンド・ジオラマスタジオ問わず)に最初にログインした時点で以下のアイテムがプレゼントされます。 忍者型フブキ 一体 忍装備 一式 武器「忍刃鎌“散梅”」 腰装備「忍草摺“紫蘭”」 胸装備「忍装束“紫苑”」 急速バッテリー充電器 10個(使うとなくなってしまう消費アイテム) 武装パーツ試用チケット 3枚(使うとなくなってしまう消費アイテム) その他補足他の忍装備は アチーブメント を達成すると貰えます大手裏剣“白詰草”はアクセスコードを入力すると貰えますhttp //www.shinki-net.konami.jp/info/tgs2006rpt.html 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/battlerondo/start/campaign.html 上へ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/442.html
「何なのネ、コイツッ!?」 虚空の空を一瞬で塗り替える、華麗で危険な花火の大群。 「……ふ」 しかし彼女はまるで、危険な花火師の影から産み落とされたかのように、平然と現れ出る。 「貴様も……贄となれぇ……!」 「チョ!?」 次の瞬間、フィールドには断末魔の絶叫ではなく、残酷な破裂音が響き渡っていた。 頭部をパイルバンカーで打ち抜かれ、無残な姿を晒す相手の神姫。 彼女の脳髄が砕け、貫かれ、オイルと言う名の血肉が、漆黒の神姫の全身に新たな彩を加えていく。 「ファン・エタンセル!!!」 まるで追悼の言葉を送るように……しかしその口元には禍々しい三日月の笑みを浮かべ……最後のシーンへと彼女は躍り出る。 復讐と言う、華麗で狂気に満ち溢れた舞台へと ねここの飼い方・光と影 ~四章~ 試合終了と同時にアクセスポッドから電光のごとく飛び出して……いや逃げ出してくる神姫。 「……アルネ?ちゃ、ちゃんと顔あるネー?」 「あるから、んな馬鹿みたいに顔ペチペチ叩くのやめんか。この馬鹿猫が」 しきりに顔があることを確認しそれに安堵するマオチャオタイプと、それを呆れた様に見下ろす、胸元全開の黒いコートを中心としたパンクファッションに身を包んだケバケバしい金髪の女性。 「しかしアイツの戦い方、なんてーか自殺願望でもあるんじゃないか? お前の攻撃避ける所か無視して突っ込んできて、一撃か」 そう分析しつつもケラケラと下品に愉快そうに笑う彼女。自分の神姫が負けたことが、逆に嬉しそうなほどである。 やがて笑い声がふっと途絶え、彼女は他人が目撃すれば恐怖し畏怖されんばかりの、鋭く激しい猛禽類のような眼つきでモニターを眺める。 「ヤツの目はある意味…貴様らに似ているかも知れんな。満たされていない、良く腐った目だ」 そこには獲物をまた1匹仕留め、達成感と虚脱感、悦楽と落胆、あらゆる感情が渦巻き、顔に滴るオイルをチロリと嬉しそうに舐めたネメシスの姿が映し出されていた。 (また1人……でも何か違う、まだまだ足りない。アイツじゃないから……?) フィールドに佇みながら、自問自答を繰り返すネメシス。 (でも……アイツに自ら挑むことは許されない、許されるはずが無い。私に出来るのは……) ネメシスは自らサイドボードを呼び出し、手のひらサイズの薄い紙のような物体をその手に実体化させる。 それはマオチャオのヘッドギアやドリルなどにマーキングされている猫の顔のシール。 …・・・但し顔には、斜めに鋭く稲妻のようなラインが走っており、まるで猫の顔を雷光が無残に射抜いたかのような風合いのシロモノだった。 ネメシスはそれをエトワール・ファントムの機体にペタリと貼り込む。外見からは見えない、ネメシスだけが確認できる位置へ。 その場所には、今貼られたものも含め十数枚の顔が貼られている。 それは誇りか、贖罪か、あるいは自らが手を掛けた者への追悼? それとも…… (私は……あの日から……) その日、一家は久しぶりに両親と娘が揃っての夕食を迎えていた。 だがそこにあるのは賑やかな談笑に彩られた幸せな親子の風景ではなく、カチャカチャと無機質に食器が擦れ合う音のみが、3人にとっては広過ぎる食堂に虚しく響き渡る。 穏かだが冷たい空気。 「明」 ふいに父親が口を開く。豊かな口髭を生やし、冷徹で相手を威圧するような鋭い眼を持つ、仕事の鬼と形容しえるような雰囲気を持った人物である。 「……はい、お父様……」 娘は控えめにおずおずと、返事を返す。忙しい父との会話は1ヶ月ぶりであるにも拘らず、いやだからこそ口は重くなる。 「ふぅ……もっとはっきり返事するように、まるで名前と正反対ではないか。俺はお前をそんな風に育てた覚えはだな……」 語尾が徐々に強くなってゆく父。それとは反対に臆して更に縮こまる娘。 「あなた、そのくらいに……」 「ん、そうだな……。明、お前は今日が誕生日だったな。」 「そう、ですね」 明はそれが自分のことであるのに、興味が全くないかのように応じる。 「……まぁ、いい。とにかく、誕生日プレゼントを用意した。お前が以前から欲しがっていると言っていた……そう、武装神姫とかいう人形だな」 「え……!」 明の顔が上がり、薄い頬とその瞳には感激と喜びが溢れ出すかのようだ。 彼女は以前から武装神姫が欲しかった。 だがバイトが許されていない彼女にとって、その値段はとても手が出るようなレベルの物ではない。オプションだけならまだしも、本体を買う金額には彼女の小遣いでは1年分であっても全く足りない。 以前の会話でその事を父に話したこともある。だがその時はそのような高額な玩具は買うに値しないと一蹴されていた。 だが父は娘が欲しがっていた事を覚えていてくれた。 その事も彼女にとっては喜びだった。 「それじゃあ、マオチャオを買ってきて下ったのですね、お父様」 「マオチャオ……? 私は玩具には疎くてな。 詳しくはわからないが、私の知人でその業界に顔の利くヤツがいてな。頼んで取り寄せてもらった。 せっかくなのでな、お前が喜ぶようにと限定版とやらの先行品を頼んでやった。」 「限定版……」 明の顔がさっと曇る。そう、現在の所マオチャオで限定版が出たという話は…… だが父は、そんな娘の表情の変化に気づく風もなく続ける。 「実はお前に驚いてもらおうと思ってな、もう起動させてある。上がりなさい」 父の椅子の傍に置かれていた小物入れから、小さな影がテーブルの上へと躍り出る。 娘は事前知識で知っていた。神姫はCSCを選択、それをセットすることで起動する事を。 そして父の手で起動されてしまったという時点で、既に自らの望む選択肢は選べなくなっているのだと言うことを。 「初めまして、アキラ。貴方が私のマスターですね」 明の眼前までやってきた神姫は、まるで王に挨拶する姫君のように、華麗な動作で自らの主人への儀礼を行う。 「………」 だが明は答えない。 それもそのはず。その神姫は彼女の予想、あるいは願望とは掛け離れていた。 その神姫は彼女が思い描いていた、つぶらで大きな瞳とショートカットの髪を持たず、凛々しい瞳と美しく長いブロンドの髪を持ち、ボディの色もマオチャオ特有の暖かみのある暖色系ではなく、冷たく黒光りする漆黒、そしてまるで血で染め上げられたような鮮やかな紅。 「どうだ明。いやはや手に取るまでは馬鹿にしてたが、どうして最近の人形は凄いものだな。」 愉快そうに笑う父。だが明にとっては…… 「どうした明。せっかく発売前の、しかも限定品を買ってきてやったのだぞ。少しは喜ばんか」 父の語気が再び強くなる。明はそれに押されるように…… 「…………ありがとう、ございます」 俯きながら、心を閉ざし、父の無理解な好意にも仮初の礼を述べることしか出来なかった。 「アキラ、これから宜しくお願いしますね。私はこれから貴方と仲良くなりたい。貴方と楽しい時間を過ごしていけたら……」 「黙って」 サイドボード上で嬉しそうに笑っていた神姫を、先ほどまでの様子からは考えられないような冷たい口調で注意する。 そのまま部屋のベッドに乱暴に突っ伏す明。 「1つだけ言っておくわ。……私が望んだのは貴方なんかじゃ、ない」 突き放すような口調……だがその語尾はかすかに震えていて 「……そう、ですか」 神姫の顔からもふっと笑みが消える。彼女もあの場にいたのだ、そして彼女は神姫。 神姫関連の情報は基本情報としてインプットされている。 それは、今ベッドに伏せっている少女が先ほど発した言葉の意味が理解できることを示す。マオチャオの意味を…… 「そう、よ。お父様の手前、貴方は私の元にいる。ただそれだけよ」 気まずい沈黙が訪れる。2人とも項垂れたまま顔を上げようとも、声を掛けようとも、しない。 やがて、神姫は顔を上げ、決断する。 「では、たった1つだけお願いがあります。私の最初で最後の願いです」 「……何よ」 迫力に気圧された明が思わずその神姫を見つめ、2人の視線が交錯する。 「私に、名前を……たったそれだけです」 「……いいわ」 彼女は戸棚にある本の群れに目線を移動させ、そして1冊の本を注視する。 「……ネメシス。それが貴方の名前」 「了解しました。我が主、アキラ」 復讐を司る神の名前、まさに私と彼女に相応しい名。 このとき彼女はそう信じていた。 (今思えば……必然だったのかもしれない。私が黒衣を纏って生まれたことも、こうなる事も) 自嘲気味な思考を重ねるネメシス。 マオチャオ型を屠った事で、一時的にだが多少は精神が安定しているのかもしれない。 新興都市のビルディングが醸し出す、幻想的で美しいが何処か無機的な冷たさの夜景が彼女の眼前に広がっている。 「2人で……見たかったな」 ポツリと、自分自身が発した言葉に驚くネメシス。 「……あれ、なんでだろ。景色が霞んで……」 その眼には、先程までの狩猟の獣のような鋭さは失われ、ただポロポロと虹色に輝く雫が彼女の頬へと流れ落ちてゆく。 復讐の炎が衰えた時、繊細な魂が露になる瞬間。 『お前は今日から明と共に過ごすんだ。命令だ』 『…………ありがとう、ございます』 自分と同じ境遇を与えられ……いや押し付けられた少女。 だからこそ愛しい。神姫である自分のこの感情が正しい物なのかはわかない。 しかし、今自分が行っていることは彼女に対する裏切り、少なくとも許容してはくれないだろう。 (いっそ、壊れてしまえばいいのにな……完全に) そうすれば自分はジレンマから逃れられ、彼女は新たな神姫を得られるかもしれない。 (……それも嫌……) 彼女と会えなくなる。そう少し考えるだけでも、AIがオーバーフローを起こしそうになる。 いかに彼女に遠ざけられ、蔑まれてもこの感情だけは変えられない。それは自分の中のもっとも大切なココロの在り処だから。 「 ネメシス ちゃん 」 「!?」 後ろから柔らかな声が、自分に向かい掛けられる。自分以外の存在のないはずのこの場所で。 振り向いた彼女は、大きくその眼を見開く。 そこにいたのは、ネメシスにとっての光。影である自分では決して届き得ない存在。だが、だからこそ望むのであろう。 「……ねここ……」 ねここを見つめるネメシスの眼には、涙を浮かべたまま、復讐の炎が再度宿っていた。 それは、熱く激しく……とても哀しい瞳。 続く トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2444.html
与太話5 : 参上! 正義の戦乙女!! 「この手が望むは強敵との勝負!」 鉛色のコートが虚空に靡く。 「C・S・Cに誓うは主の勝利!」 輝く双剣が映し出す絶対的な修道女の影。 「阻む黒雲切り開き、勝利を掴む古の血統ッ!」 機械仕掛けの脚が鉄の運命を踏み砕く。 「正義の戦乙女――」 見開かれた双眸が蒼き炎を灯した。 「エル参 「遊んでないで真面目にやってよエル姉!」 コタマが操るホイホイさん、巨大なガントレットを両腕に付けた【ファースト】の攻撃範囲から逃れ下がってきたメルに名乗りを遮られ、エルはプクゥと頬を膨らませた。 「せっかく徹夜で覚えたんですから邪魔しないで下さい!」 「徹夜!? そんなことする暇があったらコタマ姉の対策の一つでも考えてよ!」 言いつつ、メルは決めポーズのままつっ立っていたエルを抱えビルの影に飛び込んだ。直後、二人がいた場所を二発の弾丸が、空気を貫くようなゾッとする音を残して通過した。 「少し漫画で目立ったくらいで図に乗ってんなよコラァ!」 続け様、コタマはもう一体のホイホイさん【セカンド】に二人が身を隠した壁面を撃たせた。神姫の身長より長い大型対物ライフルで壁を粉砕できるとはいえ、この銃撃はエルとメルを狙ったわけではない。威嚇のつもりもなく、ただ、コタマは腹を立てていた。 エルが徹夜で読んでいた漫画をコタマも読み終えていた。漫画の中で目立ちに目立ったアルトレーネとは対称的に、ライト級神姫は小動物二匹がたった1ページ登場しただけだった。ハーモニーグレイスは前巻でオマケのような扱いだった。 コタマはライトアーマーという格付けそのものに不満を持っているわけではなかった。自身、ファーストとセカンドを除けば、装備品は姫乃お手製の修道服と糸を伸ばした二つの十字架だけである。 だがその扱いが許せなかった。漫画の中でライト級神姫達がまるで幼稚園児のように描かれていることが許せなかった。いや、百歩譲って小動物系はいい。コタマとは何の関係もない。だがハーモニーグレイスがそいつらと同じレベルで争っているのはどういうことか。小動物にシールを奪われ「その金ピカネコは私が狙ってたのにー!」とべそをかくハーモニーグレイスを見てコタマは漫画をゴミ箱へ捨てようとして、鉄子と喧嘩になった。作者へ苦情メールも送った。 そして第三巻が発売されたのが昨日のこと。再び漫画をゴミ箱へ投げ捨てようとして再び鉄子と喧嘩になり、苦情メールを数回送っても収まらない憤りをバトルにぶつけようと、エルメル姉妹からの挑戦を二つ返事で受けた。 「出てこいエル、メル! 来ねぇのなからこっちから行くぞ!」 故に、カバー折り返しに実写で掲載されるという破格の待遇を受けたアルトレーネを生で見て、憤りが収まるどころかより膨らんでいったのは詮ないことだった。 「やけに機嫌悪くないか、今日のコタマ」 貞方とタッグを組むという不愉快を極めた申し出だったが、エルとメルにああも真剣に頼まれては断り切れなかった。昨日発売された武装神姫の漫画を読んだエルとメルは漫画の後半で活躍した戦乙女型を見て「私(ボク)達はもっとやれるんじゃないか」と何の根拠も無い自信を持ったらしい。一人では無理でも、二人が力を合わせればドールマスターすら打倒し得る、と。 俺の隣で腕を組んでいる貞方はジッと筐体の中を見ている。 「背比、お前竹櫛さんと同じ弓道部ならコタマの弱点とか知らないのか」 「弱点? あー……そういえば」 「なんだ?」 「コタマってやたらとスマッシュ攻撃を使うんだよな。投げ技も一切使ってこないし、動きを読みやすい」 「スマブラの話じゃねぇよ! 神姫と何の関係あんだよアホが!」 「お前にアホとか言われたくねぇよクソが! じゃあお前がなんか考えろよ!」 放っておいてもバトルの状況は刻一刻と変わっていく。十数階建てビルの中へ逃げ込んだエルとメルを追って、コタマも壁を破って飛び込んでいった。 中の様子は別モニターに映し出される。ビルの内部は会社を模しているのだろうか、人が誰もいないことを除けば実在する事務所のようだった。狭いフロアに机や棚などの物が置かれている。人形二体を連れたコタマにとっては戦い難い場所だろう。 ビルの六階までコタマが上がってきたところで、エルとメルは勝負に出た。ファーストがガントレットでドアをブチ破りコタマが事務所の入口を跨いだ瞬間、エルがコタマの正面から、メルは背後から襲いかかった。ファーストとセカンドは壁を挟んで分かれ、コタマは両側の壁に阻まれ糸を自由に操れない。 待ち構えていたエルは最高速度で突進した。息を潜めていたメルはスカートの下から全武装を解放した。 だが、甘かった。 「うおっ!?」 ビルの側面の窓ガラスを突き破ってエルが飛び出してきた。反対側からメルも同じように出てきた。二人とも自発的にビルから離脱したのではない。そうでなければ、六階から落ちて受身すら取れず路上に叩きつけられるはずがない。 エルが割った窓からコタマが顔を覗かせ、ファーストとセカンドを連れて飛び降りた。 「おい貞方、今何があった?」 「知らん。状況からして、反撃されたのは確かだろうがな」 モニターには確かに、コタマを挟み撃ちにするエルとメルが映っていた。だが二人は直後にモニターから姿を消し、ビルの側面から現れた。 よろけながらもなんとか立ち上がるエルの前に、コタマは着地した。少し遅れてファーストとセカンドも降りてくる。AIを積んでいないはずの二体が何故綺麗に着地できるのかは、コタマにしか分からない。 「よォ大人気なアルトレーネ様。苦しんでるとこ悪いんだけどよ、さっきの名乗り、もう一回聞かせてくれよ」 メルはビルを挟んだ向こう側にいる。援護は期待できないが、一人で戦ってどうにかなる相手ではない。エルは剣と脚のパーツで路面を蹴り、コタマから離脱した。 「いいぞ逃げろエル! そのままメルと合――!」 しかし、エルの速度をもってしても、逃げることすら叶わなかった。 「『44ファントム』」 いつ見てもこの技は瞬間移動としか思えない。全速力で離れるエルの懐に一瞬で飛び込んだファーストは、咄嗟の剣による防御をものともせずガントレットを打ち込んだ。 自分の速度にさらなる加速を与えられたエルは、道路を飛び越え別のビル側面に叩きつけられ、力無く崩れ落ちた。 「エルっ!?」 「今だメル、本体を叩け!」 貞方のヤロウ、エルを囮にしやがった。だがファーストが未だエルへの攻撃の流れに乗って離れている今を逃せば勝ち目を完全に失ってしまう。業腹ものだが仕方がない。 ビルを回りこむのではなく中を真直ぐ突っ切ってきたメルは飛び出すなり、ありったけの武装を放った。次のチャンスが無いのなら、この瞬間で勝負を決めるしかない。 伸ばしたスカートとワイヤーがコタマへ届く直前、セカンドが持つライフルの銃身が間に割り込んだ。 「くっ!?」 「おっと危ねぇ。今のはワイアット・アープでも命取られてただろうぜ」 ワイヤーが巻きつきスカートに挟まれた銃身でそのまま、セカンドはメルを薙ぎ払った。ライフルの銃口がメルへと向けられる。 「じゃあな戦乙女。オマエらは先輩神姫への敬意が足りねぇんだよ」 後から聞いた話だと、メルはこの時「ハーモニーグレイスだってそんなに古くないじゃん」と呟いたらしい。 バトルを終えて、竹さん、貞方と三人でマクドナルドへ立ち寄った。テーブルの上では三人の神姫が例の漫画のことであれこれと議論している。先のバトルのことを持ち出さないのは良いことなのか悪いことなのか。 「そういや貞方、ハナコは?」 このところ大学でもあの健気なわんこ型神姫を見ていない。 「精密検査でメーカーに送ってある。昨日連絡があって、まだ時間がかかるらしい」 「ふうん、検査ってそんな時間かかるもんなん。コタマもいっぺん検査に出そうかね、ウルサイのが払えて丁度いいかもしれん」 竹さんはフライドポテトを一本ずつ減らしていった。ちまちまと妙に女の子らしく(いや女の子だけど)ポテトをかじるその姿はトップクラスの神姫オーナーには見えなかった。 「竹櫛さん、コタマが使うホイホイさんの……」 「ファーストとセカンド?」 「ちょっと見せてくれないか」 いいよ、と竹さんは気軽にトートバッグからハンカチにくるまれた二体を取り出した。今まで無造作にバッグの中に入れていたらしい。益々竹さんのオーナーっぷりを疑ってしまう。俺もエルの装備を筆箱に入れてるから他所様のことを言えたもんじゃないけど。 ちなみに貞方は専用アタッシュケースを持っている。クソブルジョワめ、先物取引に手を出して一日で破産しろ。 見せてもらったホイホイさんは、ごく普通のホイホイさんだった。ファーストは腕をガントレットに取り替えられているだけ、セカンドはもうそのまま害虫退治ができそうだった。 でも、この二体はバッテリーこそ積んでいるもののAIを搭載していない。動きはすべてコタマの糸で操られている。 「竹さん、コタマはどうやってこのホイホイさん動かしてんの?」 恐らくドールマスターを知る誰もが知りたい秘密だろう。思い切って聞いてみた。 でも質問が直接的すぎだろうか。貞方が「(お前、もう少し遠回しに聞けよ)」と目で言ってきた。でも竹さんはさして気にした風もなく、というより、 「さあ、分からん」 分からないらしかった。 「分からんって、竹櫛さんが用意したんだろ?」 「いーや、うちの兄貴に全部任せとるよ。メンテとかも」 「……そうか」 貞方がなぜか落ち込んでいる。きっと阿呆なりに思うところがあるんだろう。 哀れんでやろうとすると、ぎゃあぎゃあ騒いでいたエルに呼びかけられた。 「マスターマスター! やっぱりアルトレーネが一番だっきゃん!? にゃにするんですか鼻を打ちました!」 俺の元へ寄って来ようとしたエルの足を掴んで倒したコタマは、そのまま4の字固めを決めようとした。エルは鼻を押さえながらもそれに必死に抵抗している。 「オマエ今まで何聞いてたんだ! ハーモニーグレイスを差し置ける神姫なんていねぇっつってんだろ!」 「そんなわけありまっせん! どの神姫も平等なんです!」 「言ってることメチャクチャじゃねえか!」 「コタマ姉さんに言われたくありません!」 「二人はいいじゃない、漫画に出られたんだし……ボクなんて……」 小さな仲良し三人は俺達が店を出ると言うまで、俺達の意見を右から左へ受け流して自分の型の優位を主張し続けた。 オルフェ♡ カッコいいっス! 流石っす!! そう、今までの【武装神姫2036】は楽しくも、何かが足りませんでした。 その何かとはアルトレーネのことだったのです! ああ、オルフェのさらなる活躍を目にするのはいつになることやら…… 第四巻を楽しみに待ちましょう。 Wikiだと文の前に空白を置けないんですね。 知りませんでした。 15cm程度の死闘トップへ
https://w.atwiki.jp/busou_bm2/pages/156.html
とにかく、新作を出してほしいな・・・ -- (名無しさん) 2015-07-08 00 06 54 コンマイは全てのユーザーを敵に回した以上、次回作を望むのは無理と見るべし。 -- (名無しさん) 2015-07-08 17 41 41 全てのユーザーってなんかあったっけ? -- (名無しさん) 2015-10-12 00 03 50 武装神姫のゲームによるブーム復活、 その先駆けとして、バトマス最新作が出たら、買う。 -- (名無しさん) 2016-01-26 17 02 52 仮にリメイク版が出るなら最初から黒子を使わせてほしい…あんばるが最初からいるのに対がF2後って… -- (名無しさん) 2016-03-25 16 08 41
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2629.html
「よろしくお願いします!」 「……よろしく」 フィールドに降り立ったミスズ。バイザーで口元しかわからないが、挨拶を返しくれるスポーツ精神はあるようで、相変わらずの大剣を構えて仁王立ちのイスカ。 ミスズの方は、ヘッドパーツ、胸部アーマーやら脚部にも装甲が付けられていて、背中にはさっき見たのとは違い、ロケットが付いてない機翼。 そして手に持つは両刃の光剣ダブルライトセイバー。なんか、いつも見てるミスズと比べて、ものすごく格好いいな。 ダブルライトセイバーを構えて地を蹴り、イスカに向かうミスズ。 そして、真正面から両者切り結ぶ。 今のところ、イスカはあの大剣しか使ってはいない。ミスズは他にも武装を使うのだろう。でも、火器類はさっきみたいに、あの大剣で防がれるかもしれない。しかも、移動は最小限、武道のような足運び、そして大剣を片手だけで扱い、ミスズのダブルライトセイバーを捌いている。 ダブルライトセイバーを棍のように扱い、中国のアクション映画さながら流れるような攻撃を加えていく。だが、イスカは幅広な大剣を使いそれすらもことごとく往なしていく。 「たぁっ!」 ミスズの気合いの一声。 大剣の間合いから一歩踏み込む。懐に入り込み大剣の刃に触れる寸前まで、身体を押し出し、付けているバイザーごと頭部を刺し貫こうとする。 だが、それも身体を軸足でない方を後ろに滑らし、半身になり大剣で反らすイスカ。 「甘いっ!」 「!?」 反らされた瞬間、ミスズはそのまま受けた反動を利用して、グルンと身体全体を独楽のようにして捻ねった。光学の剣特有の動作音を強く発しながら、エネルギーの刃がイスカに迫る。 ……どうだ!? 「――当てられると思ったんですけどね」 瞬時に間合いから離れたイスカを見て、ミスズが驚いている。 そこには、バイザーが付いてない姿のイスカがいた。空いていた方の手にナイフを持ち、逆手に握っている。 二人がいる奥の方、バイザーはずいぶんと遠くに飛ばされているみたいだ。 とっさの判断でナイフを持ってきて頭部を紙一重でガードはしたが、バイザーに当たりあられもない方向に飛んで行ったということかな。 隠れていた目元、イスカの瞳は真っ赤になっていて、深紅の大剣と相まって、血の色に思えてしまった。……本物の悪魔みたいな、こんな悪魔型もいるのか。周りの悪魔型はもう少し可愛らしいのが多いのに。 「……少しはできる」 顔が若干嬉しそうに見えた。ミスズの事を好敵手と認めたらしい。 そして手に持っていたナイフを腰に仕舞い、大剣を両手で持ち始めるイスカ。ここからは本腰を入れてやるということみたいだ。 「相手も本気みたいだ。あれは二度は通じないだろうからな。とりあえずけん制!」 ミスズの手からは、シンプルなハンドガンが転送されてきて、空中を飛んでつかず離れずの位置でイスカに向け撃ち込む。 「……無駄だ」 しかし、どんな場所からでも、あの大剣で防がれる。 前後左右器用に大剣を使い、死角がないように、鉄壁の防御となっている。よほどの高火力の武装でないとあれを崩すのは難しそうだ。 「……来ないならこっちから行くよ」 大剣を持ったまま移動することが出来るのかと思ったけど、軽々と使っているのだから、移動も支障ないのか。 大剣を後ろに倒し、ミスズに向けて駆けていく。 ミスズの真下の近くまできて、そのまま足を曲げ地面から一気に跳躍。背中に付いたブースターみたいのを補助に使い弾丸のように跳んだ。 「……それ!」 「くぅっ!」 ミスズはあまりの跳躍の速さに回避行動が間に合わず大剣の弾丸が激突する。 持っていたハンドガンは弾き飛ばされ、持ち手と腕を使いダブルライトセイバーで盾にしたが、ミスズ自身も吹き飛ばされる。 イスカは大剣を握り直し、膝を曲げて地面に降り立つ。空中を飛ばれてても、まったく不利にもなってない。素人の僕から見てもすごく強いな。 ミスズは空中のまま木の葉のように翻し態勢を立て直す。 「このままだとやられる。ミスズ、昨日考えたのやるぞ!」 「わかりました!」 来る前に言ってたのかな? 淳平の大きな声に負けない程の声量で答えるミスズ。 光刃を消した柄をを腰のスカートに仕舞い、両手から転送されてきたのは、今度は武骨なサブマシンガンの銃二丁で、強く握りその場からもっと高く飛び上がる。 「よし、弾丸包囲だ。いけ!」 「了解。はぁぁー!」 あれが新戦法とやらなのか、サブマシンガンをイスカに向け乱発しながら、周りを縦横無尽に飛び回っている。 バババっと断続に銃声を轟かせ、空中を駆ける天使。 なるほど。 大剣では一方向しか展開できないとみて、四方八方から銃撃を加える作戦か。淳平のくせによく考えるな。これならもうちょっと学校の勉強とかにも向けて欲しいのだけど。 荒野のステージには、もうもうと土煙が立ち始め、空中を飛んでいるミスズは見えるが、イスカのいる辺りの確認がまったくできない。 サブマシンガンを撃ち切り、両者がいた付近から、できるだけ離れた位置に降り立つミスズ。全力疾走後みたいに、銃を持った両腕をダラリと下げ肩で息している。 「……はぁ……はぁ……どうでしょうか?」 「わからん」 土煙が上がり続けていて、何も反応がない。静寂が場を包む。あんなに撃ち続けていて銃声があったのに、急に静かになるとなにか不安が残る。 煙が少しずつ減ると、周りが確認できてきて……―― 「――カハァッ!」「ミスズ!!」 ミスズは目を見開き顔を苦悶にし、同時に淳平は声を上げた。 煙の風向きが丸まり、目を離した筈はないのに、突然姿を現し疾駆してきた赤目の悪魔。その手に持つのは大剣ではなく、腕部に取り付けた杭打ち機『パイルバンカー』 それをミスズの胸部、正確には鳩尾に重く突き上げていた。ボディーブローのごとく剛腕で打ち、アーマーがあるとはいえ、杭のある腕で殴られたミスズは口から空気しか出せない。 「……楽しかったよ。じゃあね」 瞬間、火花が飛び散り金属製の杭を射出。 貫かれたミスズはなす術もなく、その場の空間から掻き消えていった。 ―――― 「やっぱり、勝てなかったか」「いやでも、初めて大剣以外に使ったのを見たぜ」「ああ、バイザー取っ払った姿も初めてだし」「かなり、善戦した方だよな」「いやー、あんなアホそうな学生がねえ」 観戦していた周りのギャラリーはもう試合はないとみて、感想を口々に出しながら、バラけて行った。 画面を見ていた僕はすぐさま淳平の傍に駆け寄る。 「すいません、マスター。負けてしまいました」 「いいって、いいって。気にすんな……おう! 螢斗」 僕に気が付き、今までミスズをなぐさめていた手を止めて振ってきた。 「はぁ……なんで、勝負しかけたの?」 「だってさ、あんな試合見てたら、挑戦してみたくなるじゃん。やっぱ、まじかで見るとすっげー強いな」 「……。ミスズは、平気? なんともない?」 「はい。大丈夫ですよ。ご心配おかけしました」 「あれ~、お~い」 アホな淳平を放っておいて、僕はミスズが心配になり声をかける。やっぱり電脳空間といえどあんな杭が刺さったら痛いものだろう。あんなの物がリアルバトルなんかで使ってやられたら、絶対に神姫が危ない。最悪、死んでしまうし、武装神姫の世界でも命がけの戦いがあるんだな。 「キミたち、こんにちわ」 と、突然声が聞こえてきた。横から声をかけられたと気付き、僕と淳平は振りかえった。 見れば、向こう側にいたストラーフのオーナーの人が僕たちに挨拶をしてきてくれていた。 「さっきのでかい声にちょっと驚いたけど、結構やれるのにもっと驚いたわ」 嫌味がないように、素直に淳平の事を称賛してくれている。 また勇気と無謀を履き違えた人が申し込んできたと思ったんだろう。実際、僕もミスズはともかく淳平が指示して戦わせる姿が思い浮かばなかったからな。 「でも、ボロ負けだったじゃないすか」 「いいえ、あの突くのを囮にして本命は回転斬りのところ、結構危なかったのよ。私の指示が聞こえてなかったら、イスカは一本とられてたわ」 「え、そっちすか? 俺は弾をばら撒く作戦とか自信あったんすけど」 「あれはだめよ。相手の姿見えなくしたら、次の行動読めなくなるし、現に防ぎきっているのわからなかったでしょ。あと、いくら機動力のあるアーンヴァルでも、大きすぎる動きをしたら次の行動に支障が出るわ。だから大振りなパイルバンカーの攻撃も食らうのよ」 「ははー、なるほど。参考になるっす」 ダメだ。聞いている僕にはついていけない会話だ。バトルの意見交換をされても入り込めない。 でも、僕はこの人に用があって来たんだ。神姫バトルに興奮している場合じゃない。 「あ、あの!」 「ん? ああ。そうだったな。ええと俺は伊野坂 淳平。神姫はミスズ。こいつは長倉 螢斗です。俺の友達なんですけど、実はこいつの用事がおねえさんに会う事だったんですよ。バトルは俺のただの気まぐれで、俺の方はただの付き添いですんで」 「へぇ、私は宮本 凛奈。神姫はイスカね。ちょっと戦いすぎて今はスリープモードになっているけど。で、私に用事って、なにかな?」 違う人という可能性もあったけど名前を聞いて。この人なんだと確信した。単に似ているだけの可能性もたった今消えた。 「あの、……山猫型の神姫をなくしたりしてませんか?」 「もしかして!? あの子のことを知っているの」 「はい。つい最近拾いまして、……僕の神姫になっています」 動揺しているこの人の淡い水色の目を、真っ直ぐに見つめて言う。シオンを追い詰めることをするようには見えないけど、でも彼女は苦しんでたんだ。ちゃんとした神姫オーナーだったら悲しませるような事はしない。 「……そう。あの子……よかった」 でも、この人は僕の神姫になっていたという事に安堵していた。 「なんで!? 元々あなたのでしょ。責任持って神姫を扱ってください!」 「……おい」 「あ……すいません。……失礼な事を言いました」 おもわず声を荒げてしまった。淳平に止められなかったら言いたいこと全部をここでぶちまけていた。 「いえ、私が悪いのだし。あの子だって恨んでいたでしょ?」 「恨んでいるなんて言ってませんでしたし、逆に悲しんでいました。傍にいられなくなる程に。僕の神姫になってくれる了承もしてくれましたけど、まだ引きずっているんです」 「……そう。わかったわ。詳しく話したいのだけど、ここじゃ無理ね。私この後用事があるのよね、携帯のメアド教えてくれる? 後で連絡するから」 「わかりました」 ポケットから携帯を出して、お互いのプロフィールを送受信する。携帯はシンプルでストラップもなにもない。ぼくも、そうなんだけどね。 「あー、おれもしていいっすか?」 頭を掻いてなにやら言いずらそうにしている。まあ、僕のせいで空気が重くなってしまったし、淳平もこの空気を読んでいてくれてたんだろう。 「ふふ。まあ、いいわよ」 「そうっすか!? やったー!」 了承してくれた宮本さんに、淳平はガッツポーズをしてものすごく喜び、すぐさま携帯を取り出して操作している。美少女じゃなくても結局綺麗な女性だったら誰でもいいのか。 そして、胸ポケットには凍えるような瞳をして淳平を見るミスズが。やばいだろ、あの目は。 「あ、それじゃ。そっちの都合でいいので、後ほど連絡を。ほら、行くよ淳平」 「またレクチャーしてくださーい」 僕は危機的状況を理解してない淳平を引っ張って、ゲーセンの出口に向かう。 後ろからは「また、後で」と小さく聞こえ、それに返事をしてその場をあとにした。 前へ 次へ